湘南ゼミナール 神奈川県公立高校受験情報

2025年度公立高校入試 特色検査「共通問題」分析資料

問1・問2

問題の概要

複数文の素早い読解力が求められる、英語・日本語の文章問題

昨年同様に問1は英語長文であるが、2つの会話文と1つのディベートが出された。また、問2も昨年同様に日本語長文の問題であるが、説明文や論説文ではなく、企業ウェブサイトからの引用であった。

問1は、日本の高校生とアメリカからの留学生による「オーバーツーリズム」と「観光地にゴミ箱を設置すべきか?」をテーマとした会話とディベートが書かれている。ポストコロナのインバウンドや国内観光客の回復をニュースなどで目にした受験生も多いのではないだろうか。設問数は5問と例年通りで、読解、資料読取、理科の基礎的内容と幅広く出題されている中、本文内容一致の出題がなく受験生にとっては時間を確保しやすかったと思われる。

問2は、「物流」をテーマにしたもので、文章は、エレコム株式会社のウェブサイト「ロジスティクス4.0とは?物流を劇的に変える最新イノベーション」からの引用であった。設問数は5問で例年通り。設問内容は社会が中心であるが、気候的知識を用いるドローンに関する問題や、荷役機械での物流を計算する問題もあり、やや科目横断的な幅広さもあった。英語同様に本文内容一致の出題は見られなかった。

設問の特徴

「文章読解力」「科目基礎力」要素を含む出題

ページ数・問題数に関しては、問1が4ページで5問、問2も4ページで5問の出題をしており、昨年同等の分量であった。

問1は、英語の読解力をベースにした空欄補充問題・資料読み取り問題・内容一致問題・読解問題・オシロスコープの読み取り問題が出題された。昨年に続き、以前出題されていた(オ)の内容一致問題がなくなったこともあり、問1をいつもよりもスピーディーに解けたと感じた受験生が多いのではないだろうか。

問2は、文章量は決して多くは無く、社会で学習する内容も含まれるテーマだったため、例年に比べて読みやすく感じたのではないだろうか。設問に関しては、例年通り、本文内容を必要とする設問、本文内容を必要としない独立した設問に分けられるものだった。明らかに国語とわかる問題は見られなかったが、言葉の一つひとつを正しく読みとり、正しく理解するという力はやはり国語で身に付けるものであるため、特色検査の基礎を支える科目とも言える。(エ)は特に難度が高く、糸口を見つけることに苦労した受験生も少なくないのではないだろうか。

取り組むにあたって意識すること

正確な読解力、確実な学力を身に付けること。

特色検査で求められることは、いかに効率良くかつ正しく情報を得て、編集し、解答を作るかという点にある。

問1・問2という文章読解をベースにする問題に関しては、じっくり文章を読まなくても設問処理をしていくことができる特色検査に応じた文章・設問の読み方、解き方を身に付けたい。

読解力・論理力は日ごろの英語や国語の学習で意識することももちろん大切であるが、特色検査に向けての対策も並行して行っていきたい。

また、近年では、理科や社会の知識を要する設問が見られるため、確実な理社の知識も体得しておきたい。

問3~問6

問題の概要

多面的・多角的な思考を要するバラエティーのある出題

昨年同様、選択大問は4題で、この中から各校が2題を選択する形となった。よって、大枠の形式には変更点は見られなかった。

問3は、2人の生徒の「災害」をテーマとした会話文の中から、資料読み取り・古文・内容一致・計算の要素を用いた読解力・思考力・計算力を問う出題がなされた。

問4は、設問ごとの繋がりはなく、それぞれ独立したテーマでの出題であった。空欄に入る語句を記入する問題、立体図形の問題、工作したあみだくじ装置を用いての問題と幅広く出題された。

問5のテーマは、ずばり「コーヒー」。淹(い)れ方からはじまり、砂糖、豆、香りとコーヒー一色の出題だが、その内容は理科と社会のしっかりとした知識が必要な出題である。

問6は、「河川」をテーマに理科・社会・数学と幅広い教科で出題。特に後半の理科・数学は難易度が高く、時間がかかった受験生が多かったのではないだろうか。

<各校の選択問題> 2024➤2025
横浜翠嵐高等学校: 問5・問6➤問5・問6
柏陽高等学校: 問3・問5➤問3・問5
湘南高等学校: 問3・問4➤問3・問4
厚木高等学校: 問5・問6➤問5・問6
川和高等学校: 問3・問4➤問3・問4
希望ケ丘高等学校: 問3・問5➤問3・問6
光陵高等学校: 問3・問5➤問3・問5
横浜緑ケ丘高等学校: 問3・問5➤問4・問5
多摩高等学校: 問3・問5➤問4・問5
横須賀高等学校: 問3・問5➤問3・問5
横浜国際高等学校(国際科): 問3・問4➤問3・問5
茅ケ崎北陵高等学校: 問3・問5➤問3・問5
平塚江南高等学校: 問4・問5➤問4・問5
小田原高等学校: 問3・問5➤問3・問5
大和高等学校: 問3・問5➤問3・問5
横浜平沼高等学校: 問3・問4➤問3・問5
相模原高等学校: 問3・問4➤問3・問5
鎌倉高等学校: 問3・問5➤問3・問5

昨年に比べ、問3が2校、問4が1校それぞれ減少し、問5が2校、問6が1校増加した。
結果、問5を出題した高校が15校と最多だった。最少は問6の3校。

設問の特徴

丁寧な読解力、深い思考・緻密な計算を必要とする出題

問3は、(ア)~(カ)の中で計6問の出題。ページ数は4ページであった。「天保の飢饉」に関する資料読み取り問題や「平家物語」の一部から当時起こったであろう災害を読み取る問題、「ローリングストック法」に関する内容一致の問題、数値計算問題、本文内容からの図の選択など、易しい問題とやや難しめな問題が混在している。時間配分上、取捨選択が必要だったかもしれない。

問4は、(ア)~(ウ)の中で計5問の出題。ページ数は4ページであった。(イ)のような問題は、特色検査対策をしてきた受験生ならば見たことがあるものだったのではないだろうか。しかし、「こんにゃく田楽」を用いての立体問題ということで「田楽!?」となった受験生もいたかもしれない。

問5は、(ア)~(オ)の中で計8問の出題。ページ数は4ページであった。コーヒー一色の問題ということで、数年前のある私立中学の入試問題を彷彿とさせる問題であった。内容は、サイフォン式の原理に触れる問題を出す一方、ドリップ式を用いての出題もあり、そこから、砂糖に関するレポートを読んでの問題、コーヒー豆の輸出入に関する問題、そして最後はコーヒーの香りを起点とした匂いのメカニズムについての問題であった。特に(ア)では、コーヒーを飲んだことはあっても、サイフォン式の淹れ方を目にしたことがある受験生の方が少なかったかもしれない。

問6は、(ア)~(オ)の中で計9問の出題。ページ数は4ページであった。(ア)~(ウ)までは順調に解き進めることができた受験生が多いのではないだろうか。しかし、(エ)を解き始めて、そのスピードが抑えられ、(オ)も一筋縄ではいかず苦労したと思われる。設問数・ページ数ともに決して多くはないものの、前半は情報の正しい読み取りと知識、思考力が必要とされ、後半は知識もちろん、高い読解力、豊かな発想力、高度な計算力を要求している。

課題と対策

問題文を正しく読み、問われていることを明確にしていくことが求められる。また、複数の情報から、それを編集し、一つの解に結び付けていくことが求められる。

大問ごとで必要とされる力は多岐にわたるが、以下の2点が重要。

1点目は、素早く正確に読み取ること。与えられる情報や求めるべきことを正しく理解した上で解き進めることが大切。そのためにも日常で起こる「ケアレスミス」を軽んじず、原因を考え解消に向かう努力をしたい。

2点目は、特に5科目(英数国理社)の日ごろの学習について、深く理解することを心がけていきたい。「こうなったらどうなんだろう」「これってなんでだろう」というような疑問を日常から持ちながら学習を進めていきたい。また、数学では基礎基本を大切にしながら、応用・発展の問題にまで触れる努力をしておきたい。