湘南ゼミナール 神奈川県公立高校受験情報

2025年度公立高校入試 5教科 分析資料

【英語】

大問構成、配点などにまったく変化はない。記述問題は問5英作文問題1題のみ、という構成も令和4年度入試から変更なし。使用されている語数は昨年と同程度。選択肢の抽象度が下がったことで解きやすくなった問題も多くなったため、平均点は上がると考えられる。

問1:リスニング問題。(ウ)は昨年と同様に全体を通した聴解力が問われる。
問2:英単語を補充する選択問題。正答となる語だけでなく、他の選択肢も含めて高い語彙力が問われている。
問3:空所を補う文法問題。(ア)頻出の後置修飾の問題だが難易度は高い。主語を修飾する後置修飾と気づけたかどうかが分かれ目となった。
問4:並べ替え問題。(ウ)は接続詞thatと動名詞が主語となる文の複数文法事項が混在した問題。動名詞のかたまりが主語になるときは単数扱いをすることを理解していることが重要。
問5:英作文問題。Do you knowの後ろの主語が「自動運転バス」になることが難度を上げたと考えられる。
問6:読解問題。相談相手に関するスピーチで語数は昨年よりもやや増加して約600語。中学生にとっても身近な話題であったため、理解しやすい文章であった。
問7:資料を使った読解問題。語数は2題で合計約500語程度。昨年と同様、複数の情報が入り乱れる点は変わらないが、正答を導くまでの分岐点が少ないため正答率は高いのではないか。
問8:対話文読解問題。語数は約700語で、昨年と同程度。登場人物は4者から3者に減少。(ウ)内容一致問題は誤答となる選択肢が明らかに文章と異なるため、正答できた受験生も多かったのではないか。

次年度は教科書改訂の年となり、内容が大きく変わることが予想される。教科書に記載されているQRコードなどで音声も利用しながら「聞く、話す、読む、書く」のバランスのよい学習を心がけよう。

【数学】

全体的な構成、出題傾向は大きく変化はしてはいないが、出題数や配点に変化のある大問も見られた。昨年に引き続き、平面図形を中心に難易度が高い問題が多く出題され、さらに、データの活用など解を導くための思考プロセスに時間がかかるものが出題された。

問1:計算では、昨年と難易度や設問数、配点に変化はなかった。
問2:小問集合では、回転体が久しぶりに出題された。
問3:(ア)(ⅱ)は、三角形の面積を求める問題であった。特別な直角三角形や等脚台形を利用するなど、難易度が高い問題であった。(イ)は、3つの箱ひげ図と生徒による会話文から、縄跳びを跳んだ回数の多い順を推理する問題であった。四分位数をしっかり理解できていれば、1人については判断することができる。残りの2人については複数の条件を整理して判断する必要があった。
(ウ)は、2次方程式に関する立式と解を求める問題だが、テープが貼られていない部分の面積について、基本的な図形に変換して考える必要があった。
(エ)は、正方形の中にある2つの合同な三角形を利用した求角の問題であった。
問4:関数(ウ)は、2つの三角形の面積の比に関する問題で、複雑な計算処理を必要とはしないが、底辺の比が等しいことから面積の比が高さの比と等しくなることを利用するとよいだろう。
問5:確率は、2つのさいころの出た目に応じた操作に従い、2人が取り分けたおもりの重さの大小を比較する問題であった。80gのおもりをどちらが取るかを正しく把握することに注意が必要である。
問6:空間図形は、三角柱が出題された。(イ)は、立体内部の垂線の長さを求める問題で、垂線を「高さ」とする図形に着目して計算処理をする必要があった。

学年・単元に偏りなく出題されているため、教科書の巻末問題、神奈川県の学力検査や追検査をはじめ都道府県の入試問題など、さまざまな出題傾向の問題に触れておきたい。

【国語】

難易度は例年並み。大問構成・配点に変化はなかった。昨年変化した、問5の複数文章の読み取りもほぼ同じ形式での出題となった。

問1(ア)のd「諮る」の読み、(ウ)の俳句の鑑賞文は、やや難易度が高かった。
問2の小説は、水墨画家が子どもたちへの絵画教室を通じて絵を描く喜びを再発見していく様子を描いた作品。一文が短く会話文も多用されており、読みやすい。難易度は例年並み。
問3の論説は、ネット空間においてデザインされる〈私〉の可能性についての文章であった。哲学的なテーマなので、抽象的な部分の読解を具体例で補って読み進める力が必要。語句の問題は昨年同様、対義語が出題された。
例年と異なり、傍線部や範囲の指定がない問題が(ク)でも出題された。部分的な読み取りだけではなく本文全体の理解が問われている。
問4の古文は、前半と後半で同じ人物にまつわる二つの話によって構成されていた。片方で主人公の人柄が理解できれば、もう一方の話を把握しやすかった。難易度は昨年より易化。
問5は空欄補充と条件語を用いる記述という構成は昨年と同様であった。手紙とLINEという身近なコミュニケーションツールの特性の違いについての文章。複数の文章やメモを照らし合わせ、空欄の前後につながるようにまとめ直す力が求められる。設問の難易度は昨年より易しくなった。
今後の対策としては、言語・芸術・哲学などの抽象度の高いテーマの文章を中心に、長い文章と選択肢を的確に読み解く対策をするとよいだろう。

今後の対策としては、言語・自然科学・哲学などの抽象度の高いテーマの論説文や、敬語表現の多い古文などの読解を中心に、文章理解を深めるような対策をするとよいだろう。

【理科】

全体の大問構成や問題数に例年と変化なく、全学年からバランスよく出題された。平均点は昨年より低くなると考えられる。内容は、例年ほど複雑な問題の条件ではなく、取り組みやすかったと感じた受験生も多かったかもしれないが、全般的に知識問題は細かい部分まで問われ、思考問題においては、問題文の条件をつかんだ上で回答できたかが重要であった。

問1:物理の小問集合。(ア)の凸レンズの問題は光の屈折の原理の理解が求められる問題で難易度が高かった。
問2:化学の小問集合。(ア)の密度についての問いで、質量と体積の関係性を問題文から読み取ることが求められた。
問3:生物の小問集合。知識中心の問題だが、(ウ)の血液の成分のはたらきの正確な知識がないと戸惑いがあったかもしれない。
問4:地学の小問集合。(ウ)の太陽の年周運動の問題は問題文の「1年の間」を読みとれたかどうかがポイントだった。
問5:運動とエネルギーからの出題。(オ)のコースの形状の問題は、表2の速さが増加する割合が変化するという条件から、曲線の形状をしていることに結びつけられるかという部分が難解だったのではないかと思われる。
問6:化学変化からの出題。(ウ)の二酸化炭素が発生する質量が最大になる組み合わせを求める問題の難易度が高く、他の小問で得点を重ねることが重要である。
問7:環境分野からの出題。(イ)で対照実験の問題が今年も出題された。普段から練習を積んでいれば比較的解きやすい問題であった。
問8:地震分野からの出題。(エ)はP波、S波の速度と地震発生から何秒後に緊急地震速報が出されたのかを1つ1つ情報を整理することで正解にたどり着ける問題であった。

今後の対策としては、問題を解くために必要な情報を、問題文から素早く正確に読み取る力を養いたい。教科書内容の知識を理解するだけに留まらず、グラフや図が何を意味しているのかまでを考察し、理解する必要がある。

【社会】

問題構成と問題数は昨年と同じで、大問は全7問、小問は4~5問の構成だった。昨年出題された9択の問題がなくなり、最大の配点も5点から4点となった。語句の正確な理解を問う問題が多く出題されたが、資料の読み取りは易化した。昨年と比べて、全体の難易度はやや易化したと考えられる。

問1・2:地理は、基本的な知識を問う問題とともに、資料を読み取る問題が多く出題された。特徴的だったのは、問1(オ)の「オンライン同時通話」に関する時差問題。一つのタイムラインの中に、日付の異なる都市が存在していることに気づけるかが鍵となった。また、問2(オ)では、NGOとNPOという紛らわしい語句の違いが問われた。
問3・問4:歴史は、基礎的な知識を問う問題と、細かな史実の理解が求められる問題がともに出題された。問4(エ)の年代整序問題は特に難しく、同じ年におこったできごとの並び替えが要求された。第二次世界大戦、太平洋戦争の展開に関する正確な知識が問われたと言える。
問5・問6:公民は、全体としてやや難しかったと言える。公共料金、核拡散防止条約、日本の企業などに関する細かい知識が求められ、苦しんだ受験生も多かっただろう。
問7:昨年と同様、地理・歴史・公民の融合問題が出題された。(エ)の資料の読み取り問題は、昨年と同様の出題形式で、4つの資料を丁寧に読み解いて資料中の内容と対応させる必要があった。

全体を通して、語句の暗記のみならず、その定義や内容まで正確に理解しているかが問われた。また、昨年と同様に、資料読解の出題も多く、最後まで集中力を切らさずに判断する力も求められた。このような問題に対応するためには、教科書内容の正確な理解、定着をした上で、過去問を解いて資料問題の対策をするのが良いだろう。