湘南ゼミナール 公立中高一貫校受検情報

2025年度 神奈川県公立中高一貫校 総合的分析

①【適性検査Ⅰ 講評】
南高校附属中学校
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

問われる基礎と客観性

「資料問題」と1題の「読解問題」、そして「作文」という大枠は変わらない。資料問題は、2024年に新しく「紙幣」が発行されたことを題材として、紙幣の人物および裏面に描かれている「浮世絵」に関する問題や、他の国の紙幣に関する問題が出題された。作文は、「読書」に関する2つの資料について「どのように本を読めばよい」と述べられているかを読み取って記述する問題。字数がそれぞれ200字以内と書きやすいものだった。

大問1「資料読み取り」は、問題数が7問。いずれも平易であり、問題6「大西洋」を漢字で書かせる問題、問題7「適切ではないもの」を選択させる問題などで、問題・条件の読み落としをせずにしっかり得点できたかが合否の分かれ目となる。資料読み取りでは満点をとるとともに、作文に十分な時間を確保するためにも、時間をかけずに答えを導き出す力が求められている。

大問2では、読解問題が1題と作文。読解問題は選択肢の構成が易しく、正解となる選択肢を選ぶのは容易と言えるだろう。こちらも時間をかけずに正解したい。作文に用いる資料の文章量は資料1が約1750字、資料2が約1200字と昨年度に比べてボリュームダウンした。資料は、「読書」に対する観点がそれぞれ異なるものであるため、主観を交えずに客観的に読み取ることが重要である。

全体を通しての難易度は、昨年と比べて下がったと言える。地理や歴史の知識も問われているが教科書レベルであり、私立で問われるような重箱の隅をつつくような問題は出題されていない。しかし、例年と同じく「思考力」「読解力」「情報処理能力(判断力)」「表現力(記述力)」を総合して問う問題であることは変わらない。平易な内容と言えどミスなく正解するためには、落ち着いて解答の条件や問われていることを正しく読み取ることが重要であり、問題を解く練習を多く積み重ねることが必要となるだろう。

②【適性検査Ⅱ 講評】
南高校附属中学校

本質思考と正確性

小問数は、20数問と例年通りだが、大問数が3問に変わった。高得点が求められる問題であったと言える。 大問1は、海外旅行を話題とする中で、気候・モバイルバッテリーに関する「読み取り」「考察」「計算」「作業」の力を問うものである。用意した知識を問うのではなく、その場での対応力・解決力を要求している。手が出ない問題はなく、素早く正確に解答する力が求められる。
大問2は、暗号の仕組みを正しく読み取り、正確に作業する力を問う問題であった。こちらも高得点が求められるが、例えば問題1の「右に3字ずらして」などの作業での確認ミスは避けたい。

大問3は、平面図形のしきつめに関する問題で、前半(問題3まで)は確実に正答したい。差がついたのは後半(問題4~5)だと思われる。問題4ではやみくもに形を探すのではなく、同じ向きの形に印をつけるなど周期に注目し、その上で形に注目しながらグループを作っていくことが必要だ。問題5でも形から考えるのではなく、1つの頂点に集まる多角形で360°を作るような組み合わせを考え、その上で形のつながりを考えていくべきである。これらの問題では、前の問題で気付いたことを次の問題で生かしていく応用力を求めている。そのような、思考の手数の多さ、残り時間から、正解率に差がついたのではないかと思われる。

近年見られた中学理科内容を題材とした問題(説明やヒントをもとにその仕組みを考える・応用させる問題)は出題されなかったが、「身近なテーマの中で、その本質に目を向けさせる・応用させる問題」は継続して出題されている。その対策においては、「自分にとって未知のことがらでも、その本質に注目し考えようとする姿勢」「長く複雑な文章を素早く読み、要点をつかむ読解力」「面倒な作業や計算を速く正確に行う力」などを養うことが求められる。

③【適性検査Ⅱ 講評】
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

思考力特化の出題へ

大問数(2問)と大問1題あたりの配点(1問あたり50点)は、2024年と同様。小問数は若干増加したが、受検生にとって気になるほどではない。出題内容は、例年に比べ作業を要する問題は減少し、思考力を測ることに特化したものとなった。難易度は2024年と比較すると「解き易くなった」と感じた受検生が多かったと思われる。

大問1は、「鉄道の安全運行の仕組み」をテーマに、文章と資料を正しく読み取る力をベースにした、思考力を問う大問だ。鉄道が好きな小学生は多いが、「機械式連動装置」や「転てつ機」についての知識は皆無であろう。知識を全く持たない状態で問題に取り組む出題こそ「サイエンスフロンティア附属中らしさ」であり、今年も健在である。受検生は過去問を中心に充分な対策を積んできたであろうが、求められる思考力のレベルは例年通り高い。

大問2は、立体の内部に新たな立体を作り、できた立体の体積、面の数、頂点の数を求める問題や、ある一方向から見たときの見え方を答えさせる問題群となった。立体の見取り図を描くことは現実的ではなく、論理的な思考によって解答を進めていく出題もあり、「算数や図形が得意」というだけで正解するのは困難である。一方で、空間図形は全国の公立中高一貫校でも多く出題があるため、対応力を身に付けるための対策はしやすく、大問1と比較すると得点に差がつきやすかったのではないだろうか。

サイエンスフロンティア附属中の適性検査Ⅱは、いわゆる理系科目からの出題ではあるが、理科や算数はあくまでも題材に過ぎず、「文章や資料を読んで正しく理解する力」「平面図形・空間図形への対応力」が求められている。これらの力は短期間で身に付くものではないため、受検生は日ごろの学習において、決して「正解すること」だけに重きをおくべきではなく、「自分の能力を高めるためのトレーニングをする」という意識で取り組むべきである。