湘南ゼミナール 公立中高一貫校受検情報

2024年度 神奈川県公立中高一貫校 総合的分析

①【適性検査Ⅰ 講評】
南高校附属中学校
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

変わらぬ「骨太な方針」と「新傾向への対応力」

「資料読取」と「作文」という大枠は変わらない。しかし資料問題の中に10~20字の記述が含まれていたり、作文が共通点の記述+要約のハイブリッド型だったりと新傾向の出題が見られた。資料問題は、例年通り資料を読み取ることで答えを導き出せるものが多いが、地理・歴史の知識があると比較的解きやすい問題があった。たとえば、白夜が見られる地域(問題1)や、歴史の主な出来事と年代(問題3・4)である。ただし、一見知識を問うように見えて、資料中に情報(ヒント)がある歴とした『適性検査』の問題になっており、教科書内容の知識を身に付けていることは大前提だが、やはり問われる根本の力は、必要な情報を的確に読み取る「読解力」や「思考力」と言える。
大問1「資料読み取り」は、問題数が6問。いずれも平易であり、問題5の選択問題や問題6の記述問題を得点できたかが、合否の分かれ目となる。問題4は知識問題だが、教科書にないような知識まで問われる私立の学力試験とは、やはり違いがある。例年通り資料読み取りでは満点を目指せる準備が必要だ。また作文に十分な時間を確保するためにも、時間をかけずに資料を読み取り答えを導き出す力が求められる。
大問2は、文章読解問題が1題と作文。読解問題は易しく、こちらも時間をかけずに正解したい。作文は段落ごとに書く内容が指定されているものであり、2つの資料の共通点記述と要約の複合型で新傾向。各段落で書く内容が指定されているので、指示を確認しながら落ち着いて筆記したい。文章量は資料1が約2900字、資料2が約1900字とかなりのボリュームなので、素早く内容を読み取るための作業力や情報処理能力を要する。
全体を通して昨年までと同様に「思考力」「読解力」「情報処理能力(判断力)」「表現力(記述力)」を総合して問う骨太な問題。その中で新傾向の問題への対応力が今年のポイントだろう。

②【適性検査Ⅱ 講評】
南高校附属中学校

「素早く、正確に」高得点を目指したい

問題数はここ数年と大きく変わらず、時間内で一通り解くことのできる量と言える。ただし、45分間、集中力高く、素早く、正確に解ききる力が不可欠と言える。
大問1は、適性検査の題材としてよく見られる「歯車」を題材とした問題であった。説明を手掛かりとして解くことができるが、対策していた生徒にとっては良いスタートを切ることができたと思われる。後半は、二〇一五年度・千葉県立千葉中学校でも出題されていた「スピログラフ」の問題である。説明や仕組みを読み取りながら、理解を深めていく探究型問題と言える。
大問2は、中学理科で扱う「飽和水蒸気量」に関する問題であった。近年、南高附属中では、中学理科内容を題材とした問題がよく出題されるが、中学の先取り学習が必要というわけではない。書かれている情報を正しく読み取り、選択・照合・計算する力が求められている。大問2は満点を狙いたい。
大問3は、「16進数」の問題で、これも対策で触れたことのある生徒が多かったと思われる。ただし、対策量の多さで得点が決まるというよりも、その場で正確に作業・計算する力が求められた。問題4(2)は、手数も多く時間がかかるため正解率は低そうだが、それ以外は確実に正解したい。
大問4は、「エネルギー」に関する比較・照合問題と言える。エネルギーに関する特別な知識は必要ではない。図表やデータを正確に比較・照合する力が問われている。問題4でうまく表現できるかが気になるが、満点が狙える問題と言える。
全体を通して、「これは手が出ない」という問題はない。その中でも大問2・4の理科分野で満点を狙い、大問1・3でも高い集中力、正確な計算・作業力で確実に正解を重ね、全体で7割以上の得点が欲しいと言える。南高附属中の適性検査Ⅱは、傾向を踏まえた「適切な対策」と、「正確性」、「スピード」が必要だ。

③【適性検査Ⅱ 講評】
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

変わらぬ「サイエンスフロンティア附属中らしさ」

例年、大問が3題で構成されていた適性検査Ⅱだが、今年度は2題と減少した。受検生にとってはこれだけでも「大きな傾向の変化」と感じ、戸惑ったのではないだろうか。しかし出題内容に目を向けると、今年度もサイエンスフロンティア附属中らしさを感じる出題であった。
大問1は、「深海探査の歴史」をテーマに、文章と複数の資料を正しく読み取り、思考、判断、作業する問題であった。科学技術の発展に関するテーマでの出題は、2019年度大問3「飛行機改良の歴史」や、2020年度大問3「ロケットの仕組みと開発の歴史」と類似しており、実にサイエンスフロンティア附属中らしいテーマだ。また、2023年度大問1「QRコードの仕組み」や2022年度大問1「ゼブラフィッシュの縞模様」のように、受検生にとってはまったく知識を持たない状態で問題に取り組むという意味で、過年度までの傾向を踏襲している。設問の形式も、与えられた数値を活用する問題、グラフから読み取れる内容を選択肢から選ぶ問題など、例年通りである。
大問2は、例年通り図形に関する出題で、折り紙を折ってから一部を切り取り、開いた時の模様について考える出題であった。一般的な題材で、対策をしてきた受検生も多かったであろう。「線対称」を活用するという解法も広く知られており、大問の前半は解きやすい設問が続く。ところが、後半からは「線対称」の活用では解答できないような出題もあり、極めて高度な思考力と正確な作業力が求められた。適性検査Ⅱ全体の最終盤でもあり、時間内に正解を出し切るのは困難であろう。
大問の減少という変化はあったが、「文章や資料を読んで正しく理解する力」「平面図形・空間図形への対応力」「情報処理力」というサイエンスフロンティア附属中が求める力は変わらなかったと言える。身に付けにくい力ではあるが、受検生は充分なトレーニングの上で適性検査に臨むべきである。