湘南ゼミナール 公立中高一貫校受検情報

2023年度 神奈川県公立中高一貫校 総合的分析

①【適性検査Ⅰ 講評】
南高校附属中学校
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

垣間見える「学校側の想い」

「作文」「資料読取」の2題構成は例年通り。しかし、問題量はここ数年で一番少ない印象。そのため、“解き終わった”ことが前提、その上での高得点勝負と予想される。
大問1「作文」は、文章を260~300字でまとめる『要約文』。文章量は約1700字程度と、令和3年の約2200字程度/令和4年の約4600字程度と比べ、だいぶ少ない。また、『要約文』以外に「読解問題」が1題あるが、易問なので受検者の多くが正答できただろう。ただし、この問題は実は、後の『要約文』を書く上での取っ掛かりとなっている。内容把握の確認という易しめの読解問題で“布石”を打ち、その後の『要約文』に繋げる構成は、問題を通じて受検者の思考を適切に導こうとする学校側の“心遣い”が伺える、良問といえる。
大問2「資料読取」は、小問数が5問。解答の根拠となる資料(情報)のタイプは、昨年は《文章・イラスト・地図・写真》と様々だったが、それに比べ、本年度は《文章》形式がほとんど。また、問題1・5の2題は、選択肢自体もやや長めの《文章》の形。よって、求められるのは、解答に必要な情報を的確且つ迅速に捉える【文章読解力】といえる。問題2は、【計算力】と【教科書内容の知識】が問われる「人口密度」の問題だが、解答時間さえしっかり確保できれば、十分に正答できる難易度。
私立中学受験の試験に多く見られるような「複雑・難解」な問題で生徒の学力を見極めようとするのではなく、小学生の内に正しく身に付けておくべき【読解力/計算力/記述力/知識】を、適切な難易度/問題量で測ろうとする学校側の意図が汲み取れる。本年度の問題量や難易度は、ひょっとしたら、大量の難問にひたすら向き合い勉強だけに終始する“受検生”よりも、頭も体も健やかに成長した《よく学び よく遊んだ》“小学生”に入学して欲しいという、学校側の想いのあらわれなのかもしれない。

②【適性検査Ⅱ 講評】
南高校附属中学校

素早く、正確に、粘り強く

大問数4、小問数16、解答数34と大きな変化はなく、解答時間内ですべての問題に取り組むことができる量である。難易度についても、「これは手が出ない。」という問題はない。しかしながら、一問一問が複合的な考え・作業を伴う問題であるため、粘り強く正確に解き切る力が要求されている。
大問1は、適性検査でよく題材になる「単位分数の和」である。会話文に沿って考え、計算・作業していけば正解できるが、対策していたことで、より速く正解した生徒も多かったことと思われる。
大問2は、定番の「初見の題材・資料を読み取り、照合・計算させる問題」である。ほとんどの受検生にとってはじめての内容だが、情報量に負けずに素早く正確に読み取り、一つ一つ確実に正解していきたい。
大問3も、適性検査でお馴染みの「数と図形の規則性」である。こちらも正確な読解力および数的処理力・図形を捉える力が問われる問題だ。会話文による導きに加え、「知識・スキル」によって、得点を重ねていきたい。
大問4は、中学校で学習する「抵抗」に関する問題だが、先取り学習を求めているのではなく、「資料や結果から、その場で仕組みを理解し考える力」を求めている。
繰り返しになるが、全く手が出ないという難問はなく、解答時間も十分にあるといえる。しかし、一問一問において、高いレベルの処理能力を求める問題であるため、「解けた」つもりであっても、「正解ではなかった」ということが起きやすい。逆に言えば、合格する受検生はそこで「間違えない」のである。ほとんどの受検生が対策学習を行い入試に挑むが、倍率約5倍ということも考えると、年齢以上の読解力・作業力・集中力などを身に付けなければならない。また、面倒な問題から逃げない精神性も必要といえる。面倒なこと─それは机から離れた何気ない生活の中にも多く存在している。能力的にも精神的にもタフな受検生になることを目指して欲しい。

③【適性検査Ⅱ 講評】
横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校

開校以来変わらない、求められる「3つの力」

適性検査Ⅱで求められる力は開校以来一貫している。「読解力」「空間認識力」「情報処理力」の3つだ。 大問1「2次元コード」は、「見たことはあるが、詳しくは知らない」という題材であろう。知識がない状態で、初めて説明される原理・仕組みを、文章や資料から正しく理解し、活用する問題である。過年度では「浸透圧」や「インクの色素分解」という、小学校では学習しない内容が出題されており、知識がない題材に取り組ませるのは、「サイエンスフロンティア附属中らしさ」といえる。題材に関する知識は不要で、普段から正しく読み取るトレーニングをすることが効果的であり、その訓練を多く積んできた受検生にとっては正解しやすい大問である。
大問2は、オセロを素材にした空間認識力を問う問題だ。ただし頭の中だけで正解するのは極めて難しい。1段目から4段目まで段ごとに切り分けた図を書き、平面で考えるという工夫が必要である。逆に言えば、空間図形が苦手であっても工夫ひとつで正解に近づくことができる。空間図形は全国の適性検査でも頻繁に出題されており、取り組む機会も多いことであろう。正解することだけを目的とせず、工夫しながら解く訓練を数多く経験しておくべきだ。
大問3は、「科学技術の発達」がテーマである。文章や資料を「読んで正しく理解する」ことに加え、立式と計算を中心とした「情報処理力」が求められる大問だ。昨年度と比べると、解答に必要な情報を取り出す点と、作業が複雑化した点で難化したといえる。特に問題2のイは、注意深く文章を読み0.5度という数字が表す意味を理解した上で、角度を1日あたりの時間に直す必要があり、正解するのは容易ではない。
「読解力」「空間認識力」「情報処理力」は一朝一夕に身に付くものではない。トレーニングを重ねて徐々に「身に付けていく」ものである。受検生はこのことを意識して受検勉強に励んで欲しい。