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公立中高一貫校受検情報

神奈川を中心とした「公立中高一貫校受検」に関する情報を掲載しています。

公立中高一貫校受検に関する解説

近年、公立の中高一貫校が注目されています。普通の公立中・高に進学するのとほぼ同じ費用で、より大きな教育効果の期待できる学校に入れる可能性があるということで、入学者選抜の倍率も軒並み高くなっています。公立中高一貫校の中には、大きく大学進学実績を伸ばしている学校もあれば、新しい取組に積極的な学校もあります。ここでは、神奈川県の公立中高一貫校についての情報を掲載していきます。

①公立中高一貫校の種類~中等教育学校、併設型、連携型~

公立中高一貫校は、大きく分けると「中等教育学校」「併設型中高一貫校」「連携型中高一貫校」の三種に分類することができます(【表1】参照)。

表1 公立中高一貫校の種別と違い
通常の中学と高校 中等教育学校 併設型 中高一貫教育校 連携型 中高一貫教育校
学年 中学校3年・高校3年 前期課程3年・後期課程3年
(通常の高1が4年、高2が5年、高3が6年と呼ばれる)
中学校3年・高校3年 中学校3年・高校3年
カリキュラム 3年単位で設定 6年単位である程度自由に組み替えが可能 6年単位である程度自由に組み替えが可能 3年単位で設定されるが、一部連携が可能
中⇒高の入試有無 通常の入学者選抜を受ける なし 附属中から高校に上がる場合はなし、附属中から他の高校を希望する場合通常と同じ 連携している高校への入試は簡易な形で実施、それ以外は通常と同じ
高校からの募集 あり なし あり あり
その他特徴 6年間変化が少ないので、腰を据えて取り組める一方、中だるみや多様性の低さが課題となる 附属中からの生徒と高校から入った生徒が完全に分けられる場合、途中から混ざる場合、最初から混ざる場合など様々 ゆるやかな連携のため制約が大きく、他の形式と比べた効果性に課題が残る

中等教育学校は、中高あわせて6年間を前期課程と後期課程に分け、1年生~6年生という考え方で中学・高校という概念を取り払ったものです。通常は高校からの募集をしないため、6年間同じ生徒で進んでいきます。カリキュラムをどんどん先取りをしたり、通常は高校で習う内容を中学内容と関連付けて学んだり、6年生時(高校3年生時)をまるまる大学受検準備に使ったり、といった柔軟なカリキュラム設定にできることが特徴です。神奈川県では県立相模原、県立平塚の2校があります。
併設型中高一貫校は、中学校・高等学校という概念はそのままに、6年間を通したカリキュラム設定を可能にしている形の学校で、その多くは、高校が附属の中学校を持つ、という形で設置されます。中等教育学校との大きな違いは、高校からの募集が行われることにより、高校から入学してくる生徒がいるということです(附属中から入った生徒が併設された高校に入学を希望する場合は、入試をしないでそのまま入学できます)。中学校から上がってきた生徒と高校から入学してきた生徒は、完全に別クラスで卒業まで行く場合もあれば、高校1年からすぐに混ざることもあり、学校によって様々なスタイルがあります。設置数は中等教育学校より多く、神奈川県では横浜市立南、横浜市立横浜サイエンスフロンティアなど3校があります。
連携型中高一貫校は、設置者が違う中学校と高等学校(例:県立高校と市立中学校)が文字通り連携して、中高の教育内容をつないでいく形の一貫校です。ただ、前述の二つと比べるとカリキュラムをダイナミックに変えることは難しく、効果は限定的であるという指摘もあります。この形の中高一貫校は中学受検がなく、また連携関係にある中学校から高校を受ける場合も、通常とは違う形ではありますが、入試が実施されます。神奈川県では県立光陵高校と横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校が、この連携型の一例です。
また、神奈川県の公立中高一貫校の一覧を【表2】に示しましたので、参考になさってください。

表2 神奈川県の公立中高一貫校
都県 校名 形態
神奈川県 神奈川県立相模原中等教育学校 中等教育学校
神奈川県 神奈川県立平塚中等教育学校 中等教育学校
神奈川県 横浜市立南高等学校・附属中学校 併設型
神奈川県 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・附属中学校 併設型
神奈川県 川崎市立川崎高等学校・附属中学校 併設型
神奈川県 神奈川県立光陵高等学校
横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校
連携型
神奈川県 神奈川県立愛川高等学校
愛川町立の各中学校
連携型

②公立中高一貫校の入学者選抜について~適性検査を攻略せよ~

公立中高一貫校で実施される中学入試は、私立の中学入試と比べて決定的に違う点があります。それが「適性検査」と呼ばれる形の筆記試験です。私立の中学入試では、国語算数理科社会、と科目に分かれた実施になりますが、公立中高一貫校の入試ではこの科目区分がありません。文系・理系に近い区分はありますが(適性検査Ⅰ・Ⅱと表記されることが多い)、それも絶対ではなく、いろんな科目が混ざり合って出題されます。たくさんの資料から読み取って答える問題、パズルのような問題、持っている知識を使って実験結果を予想する問題、500~600字程度の作文などなど、実にいろんなパターンの問題が出題されます。対策量・知識量というより、地力や普段の生活で培ってきた力が問われる入試、と言えます。学校によってもかなり傾向が変わりますので、早い段階では「この学校の対策を」と絞るよりも、いろんな問題を解くことを通じて、視点や考え方を広げていくほうが効果的です。書店で「公立中高一貫校適性検査問題集」、通称「銀本」(表紙が銀色のためこう呼ばれます)を購入し、志望校以外の問題にもぜひ取り組んでみるといいでしょう。

この適性検査、実は近年、私立中学校でも導入されるケースが増えてきています。その際は「適性検査型入試」と呼ぶ場合もあれば、「総合型」「PISA型」「思考力型」など、いろんな呼ばれ方をしています。このタイプの入試が私立でも増えてきている理由は大きく二つで、一つは時代の要請として「思考・判断・表現」のような、従来とは違った力が必要とされてきていること。もう一つは、公立中高一貫校が人気なので、その併願の私立校として選んでもらいやすくすることです。よく私立校の説明会に行くと、「ぜひ公立の練習代わりに・・・」と先生が仰るケースがありますが、これはまさに併願私立として見てもらいたい、と思っているからです。それだけ、公立中高一貫校に注目が集まっているといっていいと思います。 また、適性検査だけではなく、「報告書」と呼ばれる、中学校でいう内申書と同じ位置づけのものが点数化されますし(重みは学校によって様々)、面接やその他の検査が課されるケースもあります。受ける可能性のある学校については、下調べをしてどのような選抜制度になっているのかをチェックすることをお勧めします。
神奈川県の公立中高一貫校の選抜制度をまとめてみました(【表3】)ので、どれだけの違いがあるのか、という点をぜひご覧ください。

表3 公立中高一貫校の入試制度の例
学校名 日程(2024年) 定員 検査内容と配点
神奈川県立相模原中等
神奈川県立平塚中等
2月3日 160名 適性検査
調査書
横浜市立南高校附属中 2月3日 160名 適性検査(2科目)
調査書【5年・6年次】
川崎市立川崎高校附属中 2月3日 120名 適性検査(2科目)
調査書【6年次】
横浜市立サイエンスフロンティア高校附属中 2月3日 80名 適性検査(2科目)
調査書【5年・6年次】

③公立中高一貫校の入試倍率について

公立中高一貫校は、全般的に高倍率の入試となります(参考:【表4】)。なぜこのようになるのでしょうか。

表4 神奈川県公立中高一貫校の受検倍率
学校名 2023 (R5) 2022 (R4) 2021 (R3) 2020 (R2)
相模原中等 5.8 6.3 6.7 6.8
平塚中等 4.5 4.7 5.5 5.1
南附中 5.2 5.1 5.5 4.9
サイフロ附属中 5.6 6.2 6.4 5.7
川崎附中 4.7 3.9 3.9 4.0

一番大きな理由は、通常の公立中に行くのと費用的な負担が変わらないのに、より質の高い教育を受けられる可能性が高いことです。中学と高校でばっさりと分かれているよりも、中高6年間を通したカリキュラムが設定されていたり、高校入試をしないかわりに違う教育の取組をしていたりすることに惹かれ、受検にチャレンジする人が多くなる、というわけです。

「高いから無理だ」と考えるのも、「高いからこそチャレンジする価値がある」と考えるのも、ご家庭と本人の考え方次第ではありますが、普通の公立中では受けられない教育を受けられるチャンスでもあります。もし少しでも興味があるようなら、まずは模擬試験や塾の体験授業を受けてみることをお勧めします。

④学校ごとの適性検査の特徴について(神奈川県内)

湘南ゼミナールでは、公立中高一貫校の適性検査を総力挙げて分析し、これから受検にチャレンジする皆様のサポートをするために公表しています。ぜひこちらをご覧になり、早い段階から適性検査突破のための準備を進めていただければ、と思っています。湘ゼミは高い目標に向けてチャレンジする皆さんを応援しています。