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勉強法

小学生の算数の教え方!基本ルールと全学年・単元別教え方を徹底解説



「小学生の子どもに算数を教えたら、教え方がわかりにくいと言われた…。」
「小学生にわかりやすく算数を教えるには、どうしたらいいの?」

お子様が算数の勉強で困っていて、どうにか教えてあげたいけれど、教え方がわからずに悩んでいる親御様も、多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では小学生に向けた算数の教え方に悩んでいる親御様に向けて、お子様に算数を教える際の「教え方の基本」と「学年別・単元別の算数の教え方」を徹底解説します。

【学年別・単元別の算数の教え方 一覧】

1年生で学習する主な単元
数の概念足し算と引き算長さ・大きさの測定・比較
時刻の読み取り図形の観察・構成
2年生で学習する主な単元
表とグラフ足し算・引き算の筆算長さの単位、水のかさの測り方・表し方
3桁の数・4桁の数時刻と時間の読み取り三角形と四角形の定義・性質
かけ算分数
3年生で学習する主な単元
かけ算(乗数と積の関係・分配法則)時刻と時間の計算割り算・あまりのある割り算
筆算(3桁の足し算・引き算、かけ算)大きい数の仕組み円と球の構成・性質
小数・分数を使った計算□を使った式
4年生で学習する主な単元
大きい数の仕組み(1億よりも大きい数)折れ線グラフと表割り算の筆算
小数の仕組み(足し算・引き算・かけ算・割り算)概数(おおよその数)計算の決まり
分数の足し算・引き算変わり方調べ
5年生で学習する主な単元
図形の角三角形と四角形の面積直方体・立方体の体積
小数と小数のかけ算・割り算分数と小数、整数の関係分母の異なる分数の足し算・引き算
2つの量の関係(比例)単位量あたりの大きさ(量・速さ)割合
6年生で学習する主な単元
文字と式(xやyを使った表現)分数のかけ算・割り算(分数と整数、分数と分数)比(割合の表し方)
縮図や拡大図、対称な図形円の面積、立体(円柱・角柱)の体積比例・反比例
起こり得る場合(並べ方・組み合わせ方)

学年別・単元別の具体的な算数の教え方では、

・どのように教えたらよいか
・小学生がつまずきやすい点
・単元で理解しておきたい部分

などもお伝えしています。

この記事を読めば、小学生のお子様への教え方を具体的な例を挙げながら解説しているため、「算数をどう教えたらよいか」という悩みを解決できるはずです。小学生の算数の教え方に関する悩みを抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。

1. 【小学生の算数】全学年に共通する教え方の基本5つ

親が子どもに勉強を教えるときは、教え方が非常に重要です。

もし、

「算数を教えようとしても、子どもがきちんと勉強に向き合わない」
「どこがわからないのかきちんと言わない」

などと感じているなら、それはあなたの教え方に原因があるかもしれません

どんなに一所懸命に教えても、教え方を間違えてしまうとお子様はスムーズに理解できません。それどころか、算数が嫌いになってしまう可能性もあります。算数が嫌いになると勉強にも前向きに取り組めなくなってしまうため、親御様としては絶対に避けたいですよね。

小学生に算数を教えるときに一番大切なのは、「算数」の知識ではなく、「どうやって教えるか」という点です。その点を間違えてしまうと、勉強そのものが嫌いになってしまったり、「もう親には聞きたくない!」と真面目に聞かなくなったりしてしまいます。

だからこそ、お子様がどの学年であっても教え方の基本をしっかりと理解した上で算数を教えることが大切です。

小学生のお子様に算数を教えるときは、以下の教え方の基本を押さえるだけで、お子様の学び方やモチベーションが大きく変わります

【全学年共通】小学生に算数を教える際の「教え方の基本」5つ
・お子様が学校で教わった解き方・考え方に沿って教える
・身近なものや日常生活と結び付けて説明する
・「わからなくて当然」と考え、解く過程をほめる
・一方的に解き方や答えを教えるのは避ける
・余計なプレッシャーを与えない

もし、あなたが、

「小学生の子どもに算数を上手に教えられない」
「教えようとしても子どもがきちんと勉強に向き合わない」

と悩んでいるなら、まずは、以下を参考に自分の教え方を見直してみましょう。

1-1. お子様が学校で教わった解き方・考え方に沿って教える

算数を教える際は、お子様が学校でどのように教わっているかをしっかりと理解し、それに沿って教えることが大切です。

学校で教わった解き方を無視して教えると、まだ習っていない解き方や考え方を伝えてしまいお子様が混乱する可能性があります。そのため、教わっている解き方や考え方を理解しないまま、自分が知っている方法で教えることは避けてください

学校では、子どもの健全な発達や、今後の学習内容を考慮して作成したカリキュラムに沿って教えています。そのため、親御様から見ると回りくどいように感じても、今後の学習につなげるために段階を踏んで教えていることも考えられます。

自分で考える力や発想力を養うために、あえて遠回りするような解き方を教えている可能性もあるのです。

特に、テストでは解き方が異なったり解く過程が書かれていなかったりすると、不正解になることも少なくありません。答えを出す過程や思考を軽視し「答えがあっていれば解き方が違っていてもよい」と考えるのは、絶対に避けるべきです。

親御様が算数を教える際に学校で教わったことを否定するような解き方を教えてしまうと、お子様が混乱してしまいます。そのため、教える際は必ず、学校で教わった解き方、教科書やワークに書かれている内容に基づいて教えることが重要です。

1-2. 身近なものや日常生活と結び付けて説明する

算数は、身近なものや日常生活と結び付けて説明しましょう。

お子様の経験と算数の問題を関連付けて説明することで、問題の意図や解決方法を具体的に考えられるようになるからです。

特に、低学年・中学年のお子様は、文字や図だけで説明されると上手にイメージできないことが少なくありません。身近なものや日常生活と関連付けて算数の問題を捉えれば、お子様が実体験を通してスムーズに理解しやすくなります。割り算でつまずいているお子様でも、ピザの絵を渡して「4人で分けよう」と伝えると、きれいに4等分できるケースもあるのです。

例えば、身近なものや日常生活と結び付けた算数の説明には、以下のような方法があります。

・足し算・引き算・かけ算:手元にお金を用意し、買い物シーンと結び付けて問題を教える
・時間と時刻:実際に出かけた場所と時刻を例に出して、考えてみる
・小数点:計量カップや定規を用意し、1Lや1cmよりも小さな単位に注目させる

実体験と結び付くと、応用力が養われます。生活する中でさまざまな算数の計算をするようになるので、自然と成長が期待できるでしょう。

1-3. 「わからなくて当然」と考え、解く過程をほめる

お子様に算数を教えるときは、「わからなくて当然」と考えることが大切です。理解しようとする姿勢や、問題を解くために懸命に考えて試行錯誤する過程を認め、ほめてあげましょう

算数が得意な親御様は、お子様が解く問題をとても簡単に感じるかもしれません。しかし、お子様にとっては新しく学ぶ内容です。

そのため、

「この子なら理解できるはず」
「簡単な問題だし、解けて当然」

と考えるのは絶対に避けてください。

解けて当然だと考えると、お子様が答えを間違えたときや、解くのに時間がかかったときにイライラしてしまいます。「どうしてわからないの?」と叱ったり感情的になったりすることで、お子様が委縮してしまい、落ち着いて思考できずにミスが増える悪循環に陥ります

間違うことは悪いことではありません。どのように考え、どこでつまずいたのかを明らかにすれば、同じ間違いを繰り返さないように気をつけられるからです。そのため、教えるときは「わからなくて当然」と考え、解くまでの過程を認めてあげましょう。

1-4. 一方的に解き方や答えを教えるのは避ける

一方的に解き方や答えを教えることは、絶対に避けてください。解き方や答えをすぐに教えてしまうと、お子様が自分で考える大切な機会を奪ってしまいます

算数は、問題を解くために試行錯誤しながら考えることで思考力が鍛えられ、理解が深まります。

例えば、

「どう解けばいいのかな?」
「あ、この方法で解けそう」
「別の方法もあるな、どっちがいいんだろう?」
「やってみたら、この方法がうまくいくかも」

といった形で、お子様がさまざまなアプローチを考えながら解くことで、思考力が鍛えられるのです。

お子様が考え込んでいる状態は、親御様から見るとじれったく感じるでしょう。しかし、そこで簡単に解き方や答えを教えてしまうとお子様の成長につながりません。

自分で深く考え、解けたときの喜びや達成感を味わう経験を積むことで、難しい問題に直面したときも諦めずに考えぬく思考力が身に付きます

そのため、「わからないから教えて」とお子様が頼んでくるまで、焦らず見守ってあげることが大切です。教える際は、どのように考えたのかを聞き、自ら気づけるようヒントを与えてあげるとよいでしょう。

理解度を確認しながら段階的に教えることで、自主的に問題解決にたどり着く思考力を養えます。

1-5. 余計なプレッシャーを与えない

お子様に余計なプレッシャーを与えないように、意識することもポイントです。

プレッシャーを感じると、お子様が

「できないと怒られる」
「急いで解かなくちゃ」

不安になり、算数に苦手意識を持つ可能性があります

学習意欲の低下にもつながるため、注意してください。

例えば、お子様にプレッシャーを感じさせる行動としては、以下が挙げられます。

・正解に過度にこだわり、大げさに喜ぶ
・不正解だとがっかりした様子を見せる
・テストで100点を取ることを求める
・友達やきょうだいと比較する
・「さっきは解けたのに、どうしてできないの?」と失敗を責める

理解したつもりでも、うまく解けないことはよくあります。算数の知識をしっかり身に付けるには、何度も問題を解き、繰り返し復習して知識を定着させることが必要だからです。

正解したときにほめることは大切ですが、正解やテストの点数ばかりにこだわると、お子様が間違えることを恐れてしまい、できない問題に取り組むことを避けるようになります

プレッシャーを感じさせるような行動は避け、間違えたとしても、しっかり考えて答えを導き出そうとした過程を認めてあげましょう。お子様が自分のペースでじっくり考え、算数の楽しさに気づくと、学習へのモチベーションが自然と高まるはずです。

2. 【全学年共通で重要】算数を解く上で土台となる4つの力

お子様に算数を教える中で

「難しい内容じゃないけれど、なかなか理解できないみたい」
「すぐ考えるのを諦めて、答えを知ろうとする」

といったことに悩む親御様もいるでしょう。

算数を解くにはいくつかの能力が必要であり、土台となる能力が不足していると、教え方を工夫するだけではなかなか結果に結び付かないかもしれません

算数を解くための土台となる能力には、以下4つがあります。

算数を解くための土台となる能力4つ
思考力【筋道を立てて考え、問題を解決していく力】・数の関係性を理解し、問題を解く方法や式を考えられる・与えられた情報や条件を考えて使いこなせる・問題解決に向けて粘り強く考えられる
計算力【式を速く正確に解くための力】・足し算・引き算・かけ算・割り算の計算、小数や分数を使った計算を正確に解ける
読解力【問題を正確に読み解く力】・文章問題や式で示されている情報を正しく捉えられる・解答で何を求められているのかを正しく理解できる
空間認識力【ものの形や大きさ、距離感を把握する力】
・図形の形を頭の中でイメージできる
・展開図を見て、組み立てたときの立体をイメージできる


これらの能力を、算数の学習だけで身に付けようとするのは難しいものです。算数の問題を解くときだけ、スイッチを切り替えるように「よく考えて思考力を伸ばそう!」とはならないですよね。

4つの能力は、算数の勉強だけでなく他の教科や日常生活の経験によって複合的に育まれます。そのため、普段の生活の中で意識すれば、算数の土台となる能力を鍛えることが可能です。

以下では、算数を解く能力向上のために、家庭で行える取り組みを紹介します。

2-1. 思考力

思考力は、算数にかかわらずこれからの勉強にも役立つため、小学生のうちに伸ばしておきたい能力です。

思考力を伸ばすには、お子様が疑問に思ったことを深く考えるように促すとよいでしょう。興味を持って「なぜこうなるの?」「どうして?」とお子様が聞いてきたときは、すぐに答えを教えるのではなく、考えてみるよう伝えます。

【家庭でできる思考力を伸ばす取り組み】
・お子様が疑問を持ったら「どうしてだと思う?」と考えさせる
・「どうしてなんだろう、調べて教えてほしいな」とお願いする
・考えてもわからないことは、ヒントを与えたり図鑑や辞書を使って一緒に調べたりする
・「わかったことを、〇〇にも教えてあげたら?」と自分の頭で考えて、人に伝えられるようにする


疑問に思ったことを自分で調べることは、さまざまな知識の向上につながります。疑問を自分で解決することで達成感を得て、考えることが好きになるでしょう。

2-2. 計算力

計算力は、算数の問題を解く上で欠かせない能力です。

日常生活のさまざまなシーンで計算力は鍛えられます。まずは、正確に答えを導き出せること、その後にスピードを上げることを意識して取り組んでください。

【家庭でできる算数力を伸ばす取り組み】・前を走る車のナンバープレートの数を足し算・引き算・かけ算・割り算を使って計算し、答えを10にするゲームをする
(例:ナンバープレートの数が「1234」なら「1×2×3+4=10」「2×4-1+3=10」など)・買い物中に、具体的な商品を見せて計算してもらう
(例:「440gで950円と、350gで800円のお肉、どっちがお得かな、計算して教えて」など)


あまり難しい計算をさせると、苦手意識を持つ可能性があるため注意が必要です。家庭では、身近なものを使って計算に慣れさせることを重視しましょう。

2-3. 読解力

算数の場合は、読み飛ばさずにしっかりと読むこと、助詞・指示語などを正しく読み解くことが重要です。

国語的な読解力ももちろん大切ですが、算数では、問題文に書かれている数の関係を正しく認識しないと解けません。例えば、「10を2で割るといくつか」「10で2を割るといくつか」では答えがまったく異なりますよね。

正しく読む・伝える能力を鍛えて算数の読解力を伸ばすために、家庭でおすすめの取り組みは以下の3つです。

【家庭でできる読解力を伸ばす取り組み】・今日のできごとを、主語・述語・助詞などに注意しながら整理して話してもらう
・今見たテレビの内容、アニメや漫画の内容などを要約してもらう
・音読させる(低学年のお子様向け)


文章をわかりやすく整理して捉えたり、表現したりすることは、他の教科にも役立ちます。語彙力の強化にもなりますので、ぜひ取り入れましょう。

2-4. 空間認識力

空間認識力は、実際の体験によって培われる能力です。いろいろな形に触れて観察し、動きを感じる体験を意識的に取り入れることで、徐々に能力の向上が期待できます。

家庭で取り組む際は、立体的な形に触れたり、奥行きや動きを感じたりする遊びがおすすめです。さまざまな方法があるので、お子様の興味を持つ方法で取り組みましょう。

例えば、以下のような方法が挙げられます。

【家庭でできる空間認識力を伸ばす取り組み】・積み木やブロック、立体パズル、折り紙などでいろいろな形に触れる
・アスレチックや球技など、空間を広く使う動きのある遊びを行う
・奥行きを意識しながら、立体的な形の絵を描く


スマートフォンを使ったゲームや動画視聴などといった平面的な遊びばかりだと、空間認識力は伸びにくくなります。日頃から、お子様と立体的な遊びを行うよう意識するとよいでしょう。

3. 【単元別】小学1年生への算数の教え方

1年生の算数は、数字とふれあい、数の概念や大きさについての感覚を身に付けることが大切です。

数字を書いたカードやおはじき、時計、絵などを積極的に使って視覚的に表し、お子様が楽しみながら考えられるようにしましょう。

次の表は、1年生で学習する主な単元の一覧です。

1年生で学習する主な単元
数の概念足し算と引き算長さ・大きさの測定・比較
時刻の読み取り図形の観察・構成


以下では、それぞれの単元を小学生にわかりやすく教える方法を、具体例を交えながら解説します。

3-1. 数の概念

数の概念では、数字の大小やものの数えかた、いくつといくつに分解できるか、数を使って順番や位置を表せることなどを学習します。

数の概念をお子様に理解してもらうには、机に座って学習する方法だけではなく、以下のような取り組みで数字に触れる機会を増やすことがおすすめです。

・湯船に浸かって数を数える
・指をさしながら、袋入りのお菓子を数えてみる
・異なる数のものを乗せたお皿を用意し、どちらが多いか比べる
・人数分のお箸やお皿を用意する


初めのうちは、8や9の数字を書くときにつまずきやすいため、手を添えて手伝ってあげるとよいでしょう。

数に慣れてきたら、数がいくつといくつで構成されているか、順番や位置の練習をします。

家庭では、視覚的に理解しやすいように、飴やチョコレートなどを使って数に慣れることから始めます。段階的に、数字を見て判断するトランプや数字カードを使うとよいでしょう。

「7個のチョコはいくつといくつに分けられる?」
「トランプで、2枚で10になる数を探そう」
「後ろから3枚目のカードを取って」

ゲームをしながら数を覚えると、楽しみながら取り組めます

3-2. 足し算と引き算

足し算と引き算を教える際は、視覚的なサポートから始めるとよいでしょう。始めは親御様が指や数字カードを使って数字を示してあげ、次の問題は自分でやってみてと促します。

1年生が学習する足し算・引き算でのつまずきポイントは、以下の3つです。

・問題文の意味と計算方法が結び付かない
・繰り上がり・繰り下がりを間違えてしまう
・2桁の数がイメージできていない


ポイントごとに教え方を解説します。

・問題文の意味と計算方法が結び付かない

問題文の意味が、スムーズに計算方法と結び付かずにつまずいてしまうケースです。

例えば、足し算や引き算の問題は、以下のような文章で出題されます。

A:「バナナが3つ、りんごが5つあります。合わせて何個でしょうか?」
B:「バナナが3つ、りんごが5つあります。どっちがいくつ多いでしょうか?」


お子様が3+5が8だと理解できていても、「合わせて」と聞かれたときに「足し算が必要だ」と判断できなければ答えられません。

このような場合は、以下のように問いかけながら、何を聞かれているのかを段階的にサポートする必要があります。

「合わせてって、どういう意味だろう」
「全部でいくつかな?って聞かれているんだね」
「じゃあ、どうやって計算したらいいかな、式を書いてみよう」


「合わせて」「増えると」「残り」「違い」などの言葉の意味を読み解けているかを確認しましょう。

同様に、Bの問題では、お子様は「どっち」が「いくつ」多いのかという2つの要素を同時に判断しなければなりません

Bのような問題は、問題文を細かく区切って以下のように問いかけましょう。

「バナナとりんごはそれぞれ何個ある?」
「どっちが多いかな?」
「いくつ多いか知るにはどうしたらいい?」


意味を区切りごとに理解していく練習をすると、スムーズに読み解けるようになります

・繰り上がり・繰り下がりを間違えてしまう

繰り上がりや繰り上がりのある計算が上手にできないお子様は、10のまとまりを作る考え方でつまずいている可能性が高いでしょう。

絵を書いたり、おはじきやブロックを使ったりして、10のまとまりを視覚的に捉えられるようサポートしてください。

足し算なら「10のまとまりができると繰り上がる」こと、引き算なら「10のまとまりを分解すると繰り下がる」ことを視覚的に理解できれば、次第に感覚が身に付くはずです。

・2桁の数がイメージできていない

お子様が13を「10と3」のまとまりではなく、「1と3」だと捉えているようなケースです。

お子様が2桁の数字がイメージできていない場合は、感覚で捉えられるように視覚的に見せてあげるとよいでしょう。

おはじきなどを使って、1から11、12、13と口で数えながら順に数を増やしていきます。13が「10と3」のまとまりだと理解しやすいよう、数字と数量のイメージを結び付けてあげましょう

3-3. 長さ・大きさの測定、比較

長さや大きさを測り、比べるための方法や条件などを考える単元です。

長さや大きさの比較では、測る単位が変わると理解が難しくなる傾向にあるため注意してください。

例えば、同じ量の水を違うコップに入れ替えたときに水面の高さが変わると、お子様は水の量が変わったように感じてしまいます。

その場合は、自宅にあるものを使って実際に水を入れ替える体験をさせると、理解しやすくなるためおすすめです。どうなるか予測してから、実際に手を動かして体験させ、結論を導き出すよう促しましょう

3-4. 時刻の読み取り

1年生では、時計を使って「〇時」と「〇時半」を読み取ることを学習します。

時刻の読み取りでよくある間違いは、以下の2種類です。

・長い針と短い針を間違えて読む(例:長針が指す数字を見て、10時を12時と読み取る)
・〇時半の読み取りで時刻を間違える(例:10時と11時の間にある短針を見て、11時半と読み取る)


家庭で教えるなら、生活のさまざまなシーンで時計を読む練習をする方法が、手軽にできておすすめです。お子様の間違い方の傾向に合わせて、「今の時間を教えて?」と声をかけるとよいでしょう。

3-5. 図形の観察・構成

図形に触れて形を知ったり、いろいろな形を作ったりできることを体感する単元です。イメージを膨らませることで、今後の平面図形・立体図形の学習につなげます。

図形の問題につまずく場合は、問題と同じような図形を紙や積み木で作ることがおすすめです。実際に、お子様自身の手で重ねたり動かしたりすると、イメージしやすくなるはずです。

図形をイメージする力を養うために、積み木や折り紙などを使っていろいろな形を作る遊びも取り入れるとよいでしょう。

4. 【単元別】小学2年生への算数の教え方

2年生の算数では、1年生で学習した足し算・引き算の発展や、かけ算や分数といった新しい考え方を学んでいきます。

特に、かけ算は算数の最初の難関とも言われる単元です。お子様がきちんと理解して取り組んでいるか、丁寧に確認してあげましょう。

次の表は、2年生で学習する主な単元です。

2年生で学習する主な単元
表とグラフ足し算・引き算の筆算長さの単位、水のかさの測り方・表し方
3桁の数・桁の数時刻と時間の読み取り三角形と四角形の定義・性質
かけ算分数

それぞれの単元のつまずきやすいポイントやお子様の考えを引き出す伝え方を解説するため、教え方の参考にしてください。

4-1. 表とグラフ

表とグラフの単元では、データを整理し表とグラフに表す方法や、読み取り方を理解していきます。

表とグラフの単元でお子様が間違いやすい点は、以下の3つです。

・どこに注目してまとめたらよいかわからない
・まとめる項目を間違える
・数えたものが途中でわからなくなる

・どこに注目してまとめたらよいかわからない
・まとめる項目を間違える

この2つは、なぜデータをまとめる必要があるのか、まとめて何を知りたいのかがお子様の中で明確に理解できていないことが原因と考えられます。

そのため、以下のように段階的にお子様の思考を促し、グラフや表を作成する練習をしてください。

「これは、どうやったらわかりやすく表せるかな」
「知りたいことが何か、確認してみよう」(お子様にまとめる項目を考えさせる)
「実際にまとめてみて」


・数えたものが途中でわからなくなる

目で追いながら数えていくと、何を数えたのかわからなくなってしまいます。間違えないように、印を付けながらグラフに〇を書くクセを付けましょう。

4-2. 足し算・引き算の筆算

足し算・引き算の筆算は、1年生のときに学習した足し算と引き算

・繰り上がりと繰り下がり
・2桁の数のイメージ

が十分に定着していないとつまずきやすいため、注意が必要です。

復習しても不安が残る場合は、図やブロックを活用して十の位と一の位を分けて表し、十の位同士と一の位同士を計算して合わせる流れを丁寧に教えます。位の計算をしっかりと分けて考えられるように、お子様のイメージ化を助けてあげましょう。

また、筆算を書くときは、位を書く位置がずれてしまうと計算ミスにつながります。慣れるまでは、スピードよりも位をそろえてきれいに書き、丁寧に筆算することを繰り返すよう促しましょう。

4-3. 長さの単位、水のかさの測り方・表し方

共通の単位で表す必要性を学習し、単位の変換や計算をできるようにする単元です。

長さの単位では、新しく「cm」や「mm」、「m」の単位を学習し、ものさしの使い方を習得します。また、水かさの測り方・表し方では、「dL」や「L」、「mL」の単位を学習します。

長さの単位や、水のかさの測り方・表し方で押さえておきたいポイントは、以下の2つです。

・単位の関係性を覚えること
・単位を変換して計算すること


例えば、1L=10dLであることを覚えること、また、「1L-5dLは何dLですか」といった問題に、単位を変換して計算し、答えられるようになることです。

どちらも、長さや量の感覚が身に付いていないと間違いやすい傾向にあります。そのため、ご家庭ではものさしや計量カップ、ペットボトルなどを使って、単位の大きさをイメージできるようにトレーニングしてください。

単位の変換は覚える必要があるため、暗記できるまでは簡単な変換表を作成して目に付く位置に貼っておくとよいでしょう。

4-4. 3桁の数・4桁の数

お子様は、数字が3桁以上になると一気にイメージしづらくなってきます。大きい数はお金を使って表すと視覚的にわかりやすくなるため、お子様が数の感覚を掴めるようにサポートしてあげましょう。

特に、お子様にとってイメージが難しいのは「0」が入る数です。

例えば、305という数を表すときに以下のような間違いをするお子様は少なくありません。

・「300が5個ある」から、そのまま数字をくっつけて「3005」
・「三百五」をそれぞれ数字に書き換えて「3005」

その場合は、以下の例を参考に、位ごとに枠を作って数字を入れ込む練習をしてください。

【例:3桁の数・4桁の数の教え方】

4-5. 時刻と時間の読み取り

1年生で覚えた時刻の読み取りの知識をもとに、2年生ではさらに細かい時刻を読み取ることや、午前・午後、正午、24時間制などの知識を学習していきます。

特に、

・24時間制を理解すること
・長針の細かい時刻を読むこと

が難しいと感じるお子様が多いでしょう。

まずは、お子様の理解を深めるため、日常生活の中で時計を意識させる会話を取り入れることがおすすめです。

「今日は、午前8時15分には、家を出発しよう」
「15時になったらおやつを食べようか」

など、会話をしながら新しく覚える表現に慣れる練習をしましょう。

その後、午後の時刻を24時間制で表す練習、実際に時計の針を動かしながら長針を読む練習に進みます。

長針を読む際は、いきなり細かい時刻を教えてしまうと混乱を招くため、15分刻みから始めて、10分、5分と段階的に細かい時刻を読めるように練習しましょう。

4-6. 三角形と四角形の定義・性質

三角形と四角形の概念や性質を学習する授業では、図形を見分ける部分でつまずきやすい傾向があります。

お子様が見慣れている形と図形の向きや角度が違うと、「三角形・四角形ではない」と答えてしまうのです。

以下は、お子様が見慣れている図形と見慣れていない図形の一例を示したものです。

【例:お子様が見分けにくい三角形・四角形】

三角形や四角形の見分けでつまずいたときは、それぞれの定義を再確認し、判断した理由をお子様自身の言葉で説明させることが大切です。

具体的には、以下のような流れで思考を促し、お子様の考えを言語化しましょう。

「三角形と四角形の決まりってなんだっけ?」
「じゃあ、この図形はなんの形?」
「どうしてそう思ったか理由を説明してみよう」(正誤に関係なく)


定義をもとに図形を分類し、理由を自分の言葉で表現することで、深く理解できるはずです。

4-7. かけ算

かけ算は、小学生にとって「算数が苦手」と感じやすい最初の難関と言えます。

やみくもに九九を暗記させようとするとお子様がつまずきやすくなるため、まずはかけ算の意味の理解から始めることがおすすめです。

かけ算は、「1つあたりの数(かけられる数)×いくつ分(かける数)=全部の数」という考え方で計算します。

よく、かけ算を「足し算を簡単にする方法」と説明するケースがありますが、このように伝えることは避けてください。お子様が「かけ算の計算をすると数が増える」という誤った理解をしてしまい、これから学習する「5×0」や「2×1.5」のような計算が理解できなくなってしまいます。

例えば、以下の2つの問題からそれぞれ式を作って計算してみましょう。答えは同じでも、かけ算の式や考え方が異なることを理解できるはずです。

・「1匹の猫には耳が2つある。4匹いたら耳は全部でいくつ?」(2×4=8)
・「1匹の猫には足が4本ある。2匹いたら足は全部でいくつ?」(4×2=8)


かけ算の意味を理解した後は、

・九九を声に出して繰り返す
・九九の歌やゲームを活用する
・九九の表を貼る
・九九のクイズを出して、思い出す機会を増やす

などの方法で覚えていきましょう。

特に、6の段以上は間違えて覚えていないか丁寧に確認してください。九九の表を貼ることは、迷ったときにすぐ確認できるため効果的です。何度も視界に入り、覚えやすくなります。

4-8. 分数

2年生では「分数とは何を表すか」という概念を学習します。3年で学習する内容のベースとなるため、しっかり理解しておきたい単元です。

2年生の分数では、「1/2」や「1/4」を見たとき、分数がどのような状態を表しているのか頭でイメージできるようになることが大切です。始めは身近なものを使って、しっかりと概念を理解しましょう。

例えば、ピザやケーキの絵を1/2、1/3に分けて「もとの大きさを、いくつかの同じ大きさに分けたものは分数で表せる」ことを理解させます。

次に、「分け方が違っても、もとの大きさが同じなら1/2、1/3も同じ大きさになる」ことをしっかり理解してもらうため、以下の流れでお子様が深く考えられるよう促しましょう。

【教え方の流れ】・折り紙を用意して「1/2に切ってみよう」と伝える
・「他の切り方で1/2にする方法はあるかな」とお子様に考えさせる・縦や横、斜めなどに分ける考え方を、お子様から引き出す
・「すべて同じ大きさになっているか確かめる方法はある?」と思考させる

5. 【単元別】小学3年生への算数の教え方

3年生では、4年生以降に学習する通分や約分、小数の計算を理解するための基礎を学習します。

個人差は大きいものの、

・時刻と時間の計算
・割り算の考え方
・3桁の筆算
・□を使った式

など、つまずきやすい単元もたくさんあるので、お子様がしっかり理解できるよう丁寧にサポートしましょう。

次の表は、3年生で学習する主な単元です。

3年生で学習する主な単元
かけ算(乗数と積の関係・分配法則)時刻と時間の計算割り算・あまりのある割り算
筆算(3桁の足し算・引き算、かけ算)大きい数の仕組み円と球の構成・性質
小数・分数を使った計算□を使った式


以下では、それぞれの単元の教え方を詳しく解説していきます。

5-1. かけ算(乗数と積の関係・分配法則)

3年生のかけ算は、2年生で学習した知識をもとにかけ算の決まりを理解する内容です。そのため、2年生で学習したかけ算が定着しているか確認してから取り組みましょう。忘れてしまっている場合は、事前に2年生で学習した「かけ算」の復習をしてください。

2桁のかけ算に取り組む前に、まずは、かける数とかけられる数を分けて計算しても、答えが同じになることに気づいてもらうことが大切です。かける数とかけられる数を分解してそれぞれ計算し、同じになることを確認しましょう。

【例:8×7を分けて計算】

上記のような図を書いて説明すると、全体の数を分けて計算していることを理解しやすいでしょう。

次に、「9より多い数のかけ算も、分けて考えると計算できるんじゃないかな」と促し、図を書いて計算してみます。(例:12×3を図で書き、9×3+3×3、8×3+4×3、7×3+5×3 などに分けて計算する)

また、0のかけ算がイメージしづらい場合は、以下のような問題を出してみてください。

「イチゴを3つのお皿に0個ずつ乗せたら、イチゴは全部でいくつになる?」
「かけ算の式を書いてみよう」


お子様が答えに迷うようなら、「0をかけると答えは0になる」ことを視覚的に見せてあげることがおすすめです。

実際にお皿に乗せて、

「2個乗せた場合の式はどうなるかな?」
「1個乗せた場合だとどうなる?」
「じゃあ、0個乗せた場合は?」

数を減らしていき、それぞれの式と答えを考えていくとイメージしやすくなるでしょう。

5-2. 時刻と時間の計算

3年生の時刻と時間の計算は、以下の3つのポイントでつまずくお子様が多いでしょう。

・〇分前、〇分後を逆に計算してしまう
・文字盤の12をまたぐとわからなくなる
・時間、分、秒の変換ができない


ポイントごとに教え方を解説します。

・〇分前、〇分後を逆に計算してしまう

「3時10分の20分前は?」という問題に「3時30分」と答えてしまう場合、お子様が針の進む方向を「前」、戻る方向を「後ろ」と捉えている可能性があります。

「後ろ」という表現が、時間が経つことを表すのか、時計の針が後ろに戻ることを意味するのかを感覚的に理解できていないことが原因です。

そのような場合は、生活の中で「〇分後」や「〇分前」という表現を積極的に使い、時間の感覚を身に付けましょう。

「30分後におやつを食べよう」
「出かける20分前には、着替えようね」

など、時間の感覚を知識としての理解だけではなく、実際の体験と結び付けることで間違えにくくなります

・文字盤の12をまたぐとわからなくなる

長い針が一周すると60分経つこと、文字盤の12を超えると次の時刻になることを理解しているか確認しましょう。

文字盤の12を超えると時刻がわからなくなってしまう場合は、円形の時計ではなく、数直線を書いて計算する方法がおすすめです。数直線に、スタートから次の時刻になるまで何分あるのか、時刻が変わってから何分経つかを書き込むと計算しやすくなります。

【数直線を使って考える方法】

・秒を分に計算できない

時計の秒針が一周すると60秒、60秒が1分になることを、時計やストップウォッチを動かして実際に見せます。その上で、80秒なら「80秒は60秒と20秒に分けられるよね、60秒は1分だから…」と、足し算や引き算で計算できることの気づきを促しましょう。

5-3. 割り算・あまりのある割り算

割り算は、日常生活で行っている「分ける」ことと結び付けて、意味や計算方法を理解してもらうことが大切です。

割り算を理解するには、2年生で学習したかけ算の知識が必須となります。覚えきれていない場合は、かけ算に戻って確実にマスターしましょう。

・割り算

割り算の基本を教える際は、おはじきや飴などを使って実際に分けながら、どのようなときに使う計算なのかを覚えてもらいます。小さな数字から始め、「以前覚えた九九を使うと答えを求められる!」とお子様が気づけると理解しやすいでしょう。

普段の生活の中で

「かけると24になる九九には、どんな数字がある?」
「おやつに15枚入りのクッキーがあるけれど、家族3人で分けると1人分は何枚になるかな?」

などのクイズを出し、割り算に慣れてもらうことがおすすめです。

・あまりのある割り算

あまりのある割り算は、絵やものを使って視覚的に表現すると、「割り切れない」や「あまり」の意味を理解しやすくなります。

割る数よりもあまりが大きくなってしまう場合、計算にミスがある場合は、「図で描いてみよう」と伝え、お子様の気づきを促すとよいでしょう。

5-4. 筆算(3桁の足し算・引き算、かけ算)

3桁の足し算・引き算、かけ算の筆算は、

・1年生:2桁の足し算・引き算
・1年生:繰り上がり・繰り下がりのルール
・2年生:かけ算

の理解をもとに学習を進める必要があります。

筆算を間違えてしまう場合は、以下3つのポイントをお子様が理解しているか改めて確認し、解く手順を注意深く見てあげましょう。

・位をそろえて書く
・一の位、十の位、百の位の順に、落ち着いて計算する
・数や桁が増えても、繰り上がり・繰り下がりのルールは同じ


計算のどこでつまずいているのかわかったら、各単元に戻って復習してください。

基本が理解できているお子様でも、桁が増えたり計算の工程が増えたりすることでつまずいてしまうこともあります。慣れるまではスピードを意識せず、一つひとつの計算を丁寧に行うことが大切です。

5-5. 大きい数の仕組み

大きい数の仕組みは、以下の2点を難しいと感じるお子様が多いでしょう。

・数字で表した数を読み上げる
・漢数字を数字表記に変える


大きい数は、数字・漢数字のどちらも「万」の前後で区切ると解きやすくなるため、慣れるまでは線を引いて解くよう促すことがおすすめです。

【例:大きい数の仕組み 教え方】

5-6. 円と球の構成・性質

円と球の構成・性質の授業では、半径や直径、中心などの用語、コンパスの使い方などを学習します。

ポイントは、以下の2点です。

・円の半径や直径は、どこも同じ長さになること
・円を書くときは、コンパスの開きが半径になること

教える際は、理屈で伝えるよりもコンパスを使って円で模様を書いたり、実際に定規で長さを測ったりして、お子様の気づきを促すことがおすすめです。

用語の理解は今後学習する内容の基礎となるため、しっかりと覚えられるよう繰り返し確認しておきましょう。

5-7. 小数・分数を使った計算

3年生では、小数の概念や小数・分数を使った計算を学習します。

3年生で学習する分数は、分母が同じ分数の足し算・引き算です。分数がどのような状態を表しているのかイメージができていないと理解が難しくなるので、つまずいているお子様は、2年生の分数を復習しておきましょう。

小数・分数を使った計算で小学生がつまずきやすい点は、以下の3つです。

・小数の概念が理解できない
・小数と分数の関係がわからない
・小数や分数の計算を間違えてしまう


・小数の概念が理解できない

小数は、大きさのイメージを掴むことが大切です。

0.1は1を10等分したものであり、1より小さい位の数だとイメージできていないと、1と0.9を比べたときに「9」という数字だけを見て0.9のほうが大きいと感じてしまいます。

具体的には、以下の方法で「小数がどのような大きさを表すのか」というイメージを補助してあげましょう。

・ノートに数直線を書き、「1はここ、じゃあ0.9はどこだと思う?」と考えさせる
・わからなかったら、「1っていう数は、小数で表すと1.0になるんだよ」と伝え、数直線に書き加える
・もう一度「じゃあ、0.9がどこかもう一度考えてみよう」と促す


メモリがある計量カップなど、家庭にあるものを使って説明する方法もおすすめです。

・小数と分数の関係がわからない

お子様が、「小数と分数は、全く別の大きさを表している」と考えている状態です。

そのため、同じ量をどちらの方法でも表せることを、視覚的に見せて実感させる方法がおすすめです。

・ノートに数直線を書いて、「0.1は、1を10等分したものの1つだったね」と0.1に印を付ける
・「1の1/10のところに印を付けてみよう」とお子様に促す
・お子様が書けずに迷っていたら「1の1/10ってどういうことだったかな」と質問して考えさせる
・書けたら、同じ位置に印が付いたことを一緒に確認する
・他の数についても、数直線上で確認していく【数直線上で分数と小数の関係を確認する】

・小数や分数の計算

小数や分数の計算でつまずいているお子様には、上2つと同様に、計算を視覚的に捉えられるようにサポートしましょう。

数直線や図を書いて、「何と何を足すのか」、「全体がいくつになるのか」を視覚化します。以下のように、お子様自身に計算の仕方を考えるよう促してください。

【例:1/5+3/5の計算】・「5分の〇」の計算のため、数直線を5つに分ける線を書く
・1/5の位置に印を付ける
・1/5の印に続けて、3/5進んだ位置に印を付ける
・全体がいくつになったのかを確認する


慣れてくると、数直線や図を書かなくても頭の中で計算できるようになります。正しく計算できるようになるまでは、機械的に計算問題を解かせるのではなく、丁寧に確認しながら進めていきましょう

5-8. □を使った式

□を使った式は、問題文の意味や構造を理解し、式に表すことを学習する単元です。わからない数を□で表し、わかっている数との関係性をどのような式にしたら表現できるかを考えることが大切です。

問題文の通りに式を作るのが難しいときは、文章で式を作ってから、わかっている数と□を入れる方法で解く練習をしましょう。

【解き方の例】

問題:クッキーをたくさん持っています。妹に8枚あげたら残りが13枚になりました。最初に持っていたクッキーの枚数はいくつですか?最初に持っていたクッキーの枚数 - 妹にあげた枚数 = 残りの枚数
 ↓
□-8=13

□を使った式は、「なぜそうなるのか」を論理的に考えるトレーニングになります。問題文の全体像を正確に捉えて式を作れるよう、じっくりと考えることを促しましょう。

6. 【単元別】小学4年生への算数の教え方

4年生になると、これまでの学習内容を発展させた単元が増え、知識を活用しながら理解を深めていくため、一気に難しくなります。割り算の筆算や小数の計算、概数などにつまずき、これまで楽しめていた算数に苦手意識を持ってしまうお子様も出てくるでしょう。

特に、割り算の筆算はこれまでとは違う筆算の書き方や、計算の手順を覚えなければならないため、慣れるまでは大変です。お子様が書き方や計算手順に迷わないように、根気強く見守ってあげましょう。

4年生で学習する算数の主な単元は、以下の通りです。

4年生で学習する主な単元
大きい数の仕組み(1億よりも大きい数)折れ線グラフと表割り算の筆算
小数の仕組み(足し算・引き算・かけ算・割り算)概数(おおよその数)計算の決まり
分数の足し算・引き算変わり方調べ


1つずつ見ていきましょう。

なお、4年生で和・差・積・商という用語を学びます。問題文でも使用されるため、お子様に教える際は、これらの用語を用いて説明しましょう。

・足し算の答え:和
・引き算の答え:差
・かけ算の答え:積
・割り算の答え:商、あまり

6-1. 大きい数の仕組み(1億よりも大きい数)

大きい数の仕組みでは、1億よりも大きい数の読み方を覚えます。

つまずいてしまうお子様は、3年生の「大きい数の仕組み」で学習した「万」までの考えと同様に、「万」「億」「兆」の部分に区切りを入れて読んでいく練習をしましょう。

お子様が、「一、十、百、千の順番で大きくなるのは、万までの数と同じだ」と気づけば、理解できるはずです。

「10倍にした数」や「1/10にした数」を考える際も、一度書いて区切りを入れてから考えるとわかりやすいためおすすめです。

【例:区切りを入れて考える】

漢数字も同様に考えるとよいでしょう。区切りを入れても混乱してしまう場合は、位の枠を作って4桁ずつ記入していくと、より視覚的に捉えやすくなります。

6-2. 折れ線グラフと表

折れ線グラフと表では、データの特徴や傾向を読み取り、考察する力を身に付けます。

教える際は、折れ線グラフや表の全体を見て一度に理解させようとするとお子様が混乱してしまうため、順を追って考えられるように導くとよいでしょう。

折れ線グラフを例に説明すると、

・縦の軸と横の軸が表しているもの
・折れ線グラフ上の点が表しているもの(1つの点に注目させる)
・何を表している折れ線グラフなのか(全体に注目させる)

を問いかけながら、1つずつ情報を理解していきます。

情報が整理できたら、次は、「この折れ線グラフから、どのようなことがわかるか」をお子様の言葉で表現してもらいます。

例えば、

・折れ線グラフの傾きが、右に上がったり下がったりしているのはどういう意味か
・折れ線グラフの傾きが変わらないところはどういう意味か
・全体として、どのようなことがわかるか

などです。

折れ線グラフを読み解けるようになったら、自分で作成する練習をします。特に、2つのデータを1つの折れ線グラフにまとめるときは混乱しやすいため、方眼用紙を大きく使い、データごとに色分けしましょう。

表を読み解く際も、折れ線グラフと同様に進めてください。項目の意味や表に書かれている数字、全体として何を表しているのかを順に確認し、お子様自身がデータの特徴を捉えられるようにすることが重要です。

6-3. 割り算の筆算

4年生の割り算の筆算では、3桁までの割り算の筆算の仕方を学習します。

これまで学習してきた筆算方法とは書き方などが異なるため、混乱しやすい単元です。2年生で学習したかけ算、3年生で学習した割り算・あまりのある割り算の理解が不十分だと桁が増えたときの計算に対応できないので、お子様が理解できているか不安な場合は復習してから取り組みましょう。

割り算の筆算でつまずきが多いポイントは、以下の2点です。

・商を立てる位置を間違えてしまう
・筆算の途中でかけ算と引き算のどちらを使うかわからなくなる

・商を立てる位置を間違えてしまう

割り算の筆算をする際、商を立てる位置がわからずにつまずいてしまうお子様が多くいます。例えば、25÷7の計算をするときに、「2」の上に商を立てるのか、「5」の上に立てるのかを判断できない状態です。

このような場合は、大きい位から順番に着目し、1桁ずつ商を立てられるか判断することを教えましょう。

先ほどの25÷7を例に説明すると、以下の通りです。

【商を立てる位置を考える方法】

頭の中で考えることが難しいなら、消しゴムや指で下の位を隠し、順番に大きい位から考えていくとよいでしょう。2桁や3桁の筆算であっても、同じ方法で商を立てる位置を判断できます

・筆算の途中でかけ算と引き算のどちらを使うかわからなくなる

割り算の筆算では、

・かけ算
・引き算
・あまりのある引き算
・繰り下がり

など、これまで学習してきた複数の知識を活用しながら計算しなければなりません

そのため、どこでどの計算を使うのか混乱しやすいのです。

計算につまずいてしまうお子様は、以下の「商を立てる→かける→引く→おろす」の手順を1工程ずつゆっくり行うことが大切です。

1:立てる商の数の見当を付ける
2:割る数に立てる数をかけて、割られる数の下にかけ算の結果を書く
3:割られる数からかけ算の結果を引き、あまった数を下に書く
4:引き算であまった数の横に、下の位の数字をおろす
5:1~4を繰り返す


割り算の筆算方法に慣れるまでは、かけ算を使うところや引き算の繰り下がりで間違えていないか、親御様が横で見守ってあげましょう。

6-4. 小数の仕組み(足し算・引き算・かけ算・割り算)

4年生で学習する小数の仕組みは、3年生の小数・分数を使った計算がわかっていないと理解できません。特に、「0.1を10個集めた数が1」という小数の基本は計算方法を学ぶ上で欠かせないため、お子様が理解しているか確認しておきましょう。

小数の足し算・引き算・かけ算・割り算の計算方法は、整数の場合と基本的に変わらないので、難しく考える必要はありません。お子様が小数の扱いに慣れるまでは、小数点を付ける位置や計算の考え方、筆算の方法などに注意してあげてください。

小数の仕組みを学習するときに、小学生がつまずきやすいのは以下の3点です。

【小数の足し算・引き算】異なる桁数の筆算で、小数点の位置がずれてしまう
【小数のかけ算・割り算】計算の考え方が理解できない
【小数のかけ算】積のどこに小数点が付くかわからない

・【小数の足し算・引き算】異なる桁数の筆算で、小数点の位置がずれてしまう

小数の足し算・引き算では、筆算の数を書く位置が変わることで混乱するお子様が少なくありません。

整数の筆算では、数の右側をそろえるようにと教わりますが、小数の足し算・引き算の場合は、小数点で位置をそろえる必要があるからです。

足し算・引き算では、同じ位の数字を足したり引いたりするため、位ごとの数が縦にそろっていないと計算がしづらくなります。整数の場合、右にそろえて書くと自然と位がそろいます。しかし、小数の場合、0.25+1.2のようなケースで機械的に右にそろえてしまうと、位の位置がずれてしまうことに気づかせましょう。

位置の違いを「整数は右にそろえる」「小数は小数点でそろえる」とただ覚えさせるのではなく、

・桁の異なる小数の足し算・引き算の筆算は、なぜ、小数点でそろえる必要があるのか
・右にそろえると、どのような不都合があるのか

を考えさせ、理解させることが重要です。

・【小数と整数のかけ算・割り算】計算の考え方が理解できない

小学生に小数のかけ算・割り算の計算を教える際は、どうやったら「整数」で計算できるかを考えると理解しやすいでしょう。

例えば、「1.23×4」という小数点を含むかけ算の場合、「1.23」を×100して整数にしてから計算し、答えをもとの位の値に戻す(÷100)考え方です。

【小数と整数:計算の考え方】

この計算の考え方をしっかり理解できていれば、小数点の位置にも迷わずにすみます

また、0.1や0.01をもとにして考える方法もおすすめです。こちらも1つ例を挙げ、0.1をもとに7.2÷3の計算を考えてみましょう。

7.2は、72×0.1と同じです。つまり「72個の0.1を3で割る」とも捉えられます。72÷3=14であり、「14個の0.1だから、答えは1.4」とも計算できます。

小数の位が増えても、整数と同じように計算できるため、計算の考え方が理解できるように教えることが大切です。

・【小数と整数のかけ算】積のどこに小数点が付くかわからない

小数のかけ算では、積のどこに小数点を付けるのかわからなくなってつまずくケースも多いです。

お子様が、積のどこに小数点が付くのかわからなくなったとき、「かけられる数の小数点をそのままおろして小数点を付けて」と教えるのは避けてください。

小数×整数であれば正しい答えを導けますが、小数×小数を学習したときに該当しない考え方のため、5年生でつまずく原因になってしまうからです。

積のどこに小数点を付けるのか迷うときは、先ほど解説した小数点のかけ算の考え方「どうやったら整数で計算できるかを考える」を思い出すよう伝えましょう。整数のかけ算と同じように計算し、「答えの整数を小数に戻すには、どうしたらいい?」と考えさせると、スムーズに理解できるはずです。

6-5. 概数(おおよその数)

概数は、数の大きさを把握しやすくするために「およそ2万人」「約1万円」のように表現する方法です。

大人からすると生活の中の身近な表現方法のため、簡単なように感じますが、つまずくお子様が多い単元です。四捨五入や「以下」「以上」「未満」といった新しい言葉も出てくるので、問題文を正しく読み解く力(読解力)や語彙力がないと解くことが難しい問題も出てきます。

特に、お子様が混乱しやすいのは、問題文がさまざまな表現で作成される点でしょう。

例えば、6543210という数に対する以下3つの問題の答えは、どれも「6543000」です。

千の位までの概数は?
百の位で四捨五入するといくつになる?
上から4桁の概数を書いてください


「千の位」「百の位」「上から4桁」など、別の位を指しているように見えますが、すべて同じ部分を四捨五入し、概数を求めます。

そのため、概数は、お子様が問題文を見て「何を問われているのか」をきちんと読み解けるようサポートすることが大切です。

先ほどの例で説明すると、それぞれ以下のようにヒントを与えながら考えを促していくとよいでしょう。

問題例:千の位までの概数は?

・概数を求める数:6543210「千の位までってどこのことを指しているの?」
「その位までの概数を聞いている問題なんだね」
「概数にしたときに、その数まで残してほしい、ということかな」
「じゃあ、どこを四捨五入したらいいと思う?」

問題例:百の位で四捨五入するといくつになる?

・概数を求める数:6543210「百の位で四捨五入ってことは、百の位はどの数?」
「四捨五入は、数の大きさによって切り捨てか切り上げになるんだったね」
「その数を四捨五入するとどうなる?」
「そうだね、四捨五入するとその桁と下の位の数は0になるんだったね」

問題例:上から4桁の概数を書いてください

・概数を求める数:6543210「上から4桁ってことは、どの数?」
「そうだね、上から4桁を残して概数にするんだね」
「じゃあ、どこを四捨五入したらいいかな」

「〇〇までという単語が出てきたら次の桁を四捨五入するとよい」と伝えるような、暗記に近い教え方は避けましょう。

お子様に、自分の頭で考えて問題文の意味を読み解く、読解力や思考力を身に付けてほしいからです。問題をたくさん解いていく中で、「こうすれば解きやすい!とお子様自身が気づくのとは異なり、単に裏技のような方法を教えるだけでは、お子様の学びになりません。

6-6. 計算の決まり

計算の決まりでは、()を使った計算のルールや、工夫して計算することを学びます。

()を使った式は、以下のルールで計算を進めることが必要です。

・基本として、計算は左から順に行う
・()があるときは、()の中を先に計算する
・かけ算と割り算は、足し算・引き算より先に計算する


お子様がどこから計算してよいかわからなくなる場合は、計算前に式全体を見て、計算する部分を囲ったり、順番を書いたりしてから計算に取り掛かるよう促しましょう。

また、この単元では3年生で学習したかけ算の分配法則などの知識を使い、計算を簡単にする工夫を考えていきます。

例えば、以下の方法で計算できることに気づくと、筆算したり暗算したりするよりも速く正確に計算できます。

98×7=(100-2)×7=700-14=686


しかし、中には「他の方法を考えるより筆算のほうが速い」と感じて、積極的に学習に取り組めないお子様もいるようです。筆算のやり方がすでに身に付いているため、新しく計算を工夫する必要性を感じないのです。

積極的に考える姿勢が見られなかったり、筆算で計算したりする場合は、工夫して計算すると楽だと感じられるような体験をさせてあげましょう。

例えば、買い物中にお菓子を買ってほしいと言われたときなどに、

「いいよ。このお菓子(298円)3個買うといくらになるか計算できる?」
「工夫すると、簡単に計算できるよ」

と質問してみてください。すぐに筆算できない状況にいるため、どんな風にしたら簡単に計算できるか考える良い機会になるはずです。

計算を簡単にする工夫は、さまざまな計算に応用できます。お子様が「少し考えてから計算すると、こんなに楽に計算できるんだ!」と気づくと、今後の学習にも役立つでしょう。

6-7. 分数の足し算・引き算

4年生の分数では、真分数や仮分数、帯分数の表し方などを理解し、同分母の分数の足し算・引き算の計算ができるように学習します。

小学生のつまずきやすい部分は、以下の2点です。

・分数が1よりも大きな数になる状態がイメージできない
・同分母の足し算・引き算を間違える


・分数が1よりも大きな数になる状態がイメージできない

これまで学習してきたのは、すべて1/3のような真分数(分子<分母)だったため、1よりも大きい数になる帯分数や仮分数をイメージできず、つまずいている可能性があります。

帯分数や仮分数がどのような数を表しているのかきちんとイメージできないと、分数の計算も理解できません。そのため、真分数と帯分数、仮分数の関係を視覚化して、イメージしやすいようサポートしてあげましょう。

以下のように、テープ図を用いて説明する方法がわかりやすいでしょう。

【テープ図を使った帯分数・仮分数の説明】

・同分母の足し算・引き算を間違える

分数の概念理解ができていないと、同分母の足し算・引き算を間違えてしまいます。例えば、1/2+1/2=2/4と答えるケースや、2/2=1が理解できないケースです。

分数の概念は2年生で学習しているので、理解があいまいな場合は戻って復習してください。概念をしっかり理解したら、小数の足し算・引き算と同様に、単位分数をもとに考えましょう

3/5+4/5を例に説明すると、以下の通りです。

・3/5は1/5が3個分と考えられる・同様に、4/5は1/5が4個分・足し算すると3個分+4個分・つまり、1/5が7個分で7/5(1と2/5)になる


単位分数が何個分なのかを着目して考えると、整数と同じように計算できることが理解できるはずです。慣れるまでは、テープ図を書いて確認しながら進めるとよいでしょう。

6-8. 変わり方調べ

変わり方調べでは、規則性を見つけて〇や□を使った式で表す思考力を養います。2つの数の変化を見てさまざまな視点で考える必要があるため、難しく感じるお子様も多くいるでしょう。

変わり方調べでつまずいている場合、以下の流れで取り組みます。

・どのような変化をしているのかを表にまとめる
・表を見て、横の数の変化・縦の数の変化をそれぞれ確認する
・増えているのか減っているのか、どの程度の数が変わっているのかを見て、規則性を考える
・規則性に気づいたら表の欄外に書き込む
・〇や□を使い、変化の規則性を式で表せるか考える

変わり方調べの規則性に気づくには、これまで学習した足し算や引き算、かけ算、割り算の知識を活用する必要があります。

お子様が規則性になかなか気づけないときは、

「表が横にいくと、いくつずつ数が増える?」
「表の縦に並ぶ数字を見比べてみようか」

など、親御様がヒントになるような声掛けをしてあげましょう。

いろいろな視点で規則性を探すように促し、最終的にはお子様自身が規則性を見つける楽しさを感じられるようにしましょう。

7. 【単元別】小学5年生への算数の教え方

5年生の算数には、割合や小数と小数のかけ算・割り算、単位量あたりの大きさなど、難しい単元が多くあります。特に、割合を苦手に感じるお子様が多い傾向にあるため、お子様が割合に苦手意識を持っている場合は、時間を取って丁寧に教えてあげましょう。

お子様に教える際は、4年生までに学習した知識とのつながりを意識して学習を進めると、より深い理解が期待できます。

5年生の数学で学習する主な単元は、以下の通りです。

5年生で学習する主な単元
図形の角三角形と四角形の面積直方体・立方体の体積
小数と小数のかけ算・割り算分数と小数、整数の関係分母の異なる分数の足し算・引き算
2つの量の関係(比例)単位量あたりの大きさ(量・速さ)割合

以下では、お子様への教え方を詳しく解説していきます。

7-1. 図形の角

5年生で学習する図形の角の授業では、三角形の内角の和が180°になることに気づき、四角形や多角形の場合に考えを広げていきます。

前提知識となる、三角形の特徴や書き方は3年生、垂直と平行、四角形の特徴や角の大きさの基礎は4年で学習しています。基礎の理解があいまいなお子様は、それぞれの学年の教科書に戻って復習しておきましょう。

図形の角の単元でつまずきやすいポイントは、以下の2点です。

・三角形の外角を求める問題が解けない・多角形の角の和を求める方法がわからない

・三角形の2つの角度が書かれている問題で、外角を求める問題が解けない

「三角形の内角の和は180°」
「内角と外角の和は180°」

と理解していても、結び付けてイメージできていないと、以下のような問題でつまずいてしまいます。

【頭の中でイメージしながら解いている例】

このようなケースでは、単純に覚える努力をするよりも、イメージできるように工夫することが大切です。

具体的には、折り紙や方眼紙でいろいろな形の三角形を作り、ちぎって角を合わせると180°になることを、お子様に実感させます。

・角に延長線を引いたときの外角は、隣り合わない2つの角度の和になる
・三角形の3つの角を合わせると180°になる

ということを、実際に手を動かして試してみましょう。

知識と経験が結び付くことで頭の中で図形をイメージしやすくなり、角度の見方が広がります

・多角形の角の和を求める方法がわからない

多角形の角の和は、いくつかの三角形に分けて考えるとスムーズに理解できます。図形に補助線を入れるように教え、分解して考えることに気づかせてあげましょう

お子様が自分で補助線を引けない、補助線を見てもいまいち納得していない場合は、以下のステップで丁寧に説明し、理解を促します。

・問題と同じ多角形を紙で作る
・「知りたい角がすぐわかるように、マーカーで色を塗ろう」と伝え、多角形のすべての角に色を塗る
・「多角形の角と角をつないで三角形に切ってみて」と、多角形を分ける工程を体験させる
・できた三角形を見ながら「どこの角度を知りたいんだったかな?」とマーカーを確認する
できた三角形のすべての角に色が付いていることを確認する
・多角形の角は、切ってできた三角形の角すべての合計であることに気づかせる

多角形の角の和に限らず、必要な部分に補助線が引けるようになると図形の問題が解きやすくなります。図形(今回であれば三角形)を見つけるためにはどこに補助線を引いたらよいか、お子様に考えさせましょう。

7-2. 三角形と四角形の面積

5年生の面積の単元では、4年生で学習した長方形や正方形の面積の考え方をもとに

・三角形
・平行四辺形
・ひし形
・台形

などの面積の求め方を学びます。長方形や正方形の面積の求め方に不安がある場合は、4年生の教科書に目を通しておきましょう。

5年生の面積では、図形に応じた底辺や高さを見つけられないことに悩むお子様が多くいます。面積の問題は、図形や問題文に書かれている情報から、底辺と高さを見つけることが大切です。

以下のように、同じ形の画像でも、どの辺を底辺と捉えるかで高さが変わります。そのため、三角形や平行四辺形の図を手元に用意し、いろいろな視点で図形を捉えてみましょう。すべての辺を底辺として考え、それぞれの高さを書き入れる練習をすると、図形の理解が深まります。

【各辺を底辺と考えたときの高さ】

三角形・平行四辺形の面積は、長方形や正方形に変形して考えられます。単純に公式を暗記させるのではなく、お子様が「どうして公式を使うと求められるのか」を理解し、説明できるようにすることが大切です。

7-3. 直方体・立方体の体積

直方体や立方体の体積の単元では、体積も面積と同様の考え方で求められることを学んでいきます。

体積を求める際は、体積を表す単位の大きさを「1辺が1cmの立方体」とし、「1㎤がいくつ分」と考えて計算を行います。1辺が1cmの立方体を底面に敷き詰め、積み木のように積み上げた状態をイメージするとよいでしょう。

直方体や立方体といった立体図形は、空間認識力が低いと構造を上手に理解できません

頭の中で図形を分解して考えたり回転させたりすることが苦手な場合は、積み木やブロックなどの道具を使って、構造の立体イメージを掴むことが大切です。問題に出てくる図形を積み木やパズルを使って組み立ててみたり、構造を確認して分解したりして、空間認識力の向上を目指しましょう。

平面だけでなく、手元で立体物を触りながら問題を解くことで、徐々に図形の構造をイメージしやすくなるはずです。

7-4. 小数と小数のかけ算・割り算

4年生では、小数と整数のかけ算・割り算を学習しました。5年生で学習するのは、小数と小数のかけ算・割り算のため、さらに難しく感じるでしょう。

しかし、考え方の基本は変わりません。小数のかけ算・割り算であっても、整数で計算できるように考えていくことが大切です。小数の計算の基本を忘れてしまっているお子様は、4年生の小数の仕組みに戻って復習しておきましょう。

小数のかけ算でつまずきやすい点は、以下の2つです。

・小数×小数で、小数点をどこに移動したらよいかわからない
・小数÷小数で、あまりの小数点の位置を間違えてしまう

・小数×小数で、小数点をどこに移動したらよいかわからない

小数×小数で、答えの小数点をどこに移動したらよいかわからなくなってしまう場合があります。特に、筆算では、答えの小数点がかける数とかけられる数よりも左側にくるため、混乱するお子様もいるでしょう。

4年生で学習した整数×小数は、かける数の小数を整数にするため10倍や100倍にして、もとに戻すために結果を1/10や1/100にする方法を教わりました。5年生で学習する小数×小数は両方を整数に変えて計算するため、もとに戻すときにいくつで割ればよいかわからなくなってしまうのです。

小数×小数を計算する際は、どちらも整数に変えて整数×整数で考えます。

例えば、2.35×1.2を例に説明すると

・2.35を100倍、1.2を10倍にして計算する
・計算で出た数を「2.35×1.2」の結果に戻すため1000分の1の2.82に戻す

という手順で計算を考えます。

この場合、かける数とかけられる数をそれぞれ100倍・10倍にしたため、計算で出た結果は100×10=1000倍になっていることを認識することが大切です。

なぜ小数点が移動するのかが理解できれば、迷わずに小数点の位置を決められるでしょう。

・小数÷小数で、あまりの小数点の位置を間違えてしまう

小数と小数の割り算では、あまりが出たときに小数点の位置を間違えてしまうお子様は少なくありません。

割り算は、「割る数と割られる数を等倍しても答えは変わらない」という性質があるため、小数×小数のときは、割る数が整数になるように小数点を移動してから割り算を行います。

しかし、あまりは等倍する前の小数点にそろえなければなりません。あまりは、「割れずにあまった数」のため、割られる数の大きさを10倍、100倍に変えるとその分あまりも大きくなってしまうからです。

「なぜそうなるのか」をしっかり理解しておかないと、間違えを繰り返すため注意してください。

以下に、あまりの小数点の位置がわからずつまずいてしまったお子様に理解してもらうための、説明の例を記載しました。段階的にヒントを与え、お子様が考えるよう導きましょう。

例題:3.4mのリボンを0.6mずつ切って配りたい。何人に配ってあまりは何mになるか1:「どういう式になるかな?計算してみよう」と聞き、3.4÷0.6の式を立てさせる
  【式 3.4÷0.6=(3.4×10)÷(0.6×10)=34÷6】2:「整数にして計算すると、あまりが4になるんだね。問題の答えはいくつになる?」
  【式:34÷6=5あまり4、正解は「5人に配ってあまりは0.4m」】3:正解したら、「どのように考えたの?教えて」とお子様の言葉で説明させる4:「5人に配ってあまりは4m」と間違えたら、「もともとの数が3.4mなのに、あまりが4mになっちゃったね」ともう一度考えさせる5:「0.1m単位で言葉の式を作ってみよう」と促す
  【式:3.4÷0.6=(0.1mが34個分)÷(0.1mが6個分)=5人分と0.1mが4個分という考え方】6:34÷6を計算して出た「5あまり4」は、0.1単位で考えた結果であることを確認する


あまりは割られる数の大きさに左右されます。そのため、あまりが出たら、割られる数の「もとの小数の位置」に合わせる必要があります。

お子様がスムーズに解けるようになるまでは、テープ図を書いて視覚的に確認する方法もおすすめです。

7-5. 分数と小数、整数の関係

3年生の小数・分数を使った計算では、分母が10の分数と小数を使って、同じ大きさの数を表せることを学習しました。

5年生の分数と小数、整数の関係では、それらの基礎知識をもとに分母が10以外の分数でも、小数と同じ大きさの数を表せることを理解し、異分母の分数の計算につなげていきます。

5年生の分数と小数、整数の関係で理解しておきたい重要ポイントは、次の2つです。

・割り算の商を分数で表す方法・分数から小数に、小数から分数にする考え方


・割り算の商を分数で表す方法

割り算の商を分数で表せることを教える際は、図にして視覚的に捉えるとお子様が理解しやすいためおすすめです。

例えば、「2Lのジュースを3人で分けると1人あたり何Lになるか」という問題は、2÷3の割り算で計算できます。しかし、計算すると「2÷3=0.666…」となり、割り切れません。そこで、図を書いて以下のように分数で表せることを説明します。

【図:割り算の商を分数で表す】

このような図に表すことで、

・割り算の商を分数で表すと、割る数が分母に、割られる数が分子になる
割り算と分数の関係は、「□÷〇=□/〇」と表現できる

ことがスムーズに理解できるはずです。

・分数から小数に、小数から分数にする考え方

分母が10以外の分数を小数で表す方法と、小数を分数で表す方法は、この単元で確実に習得したい内容です。

【分数から小数へ】

分数から小数にする際は、先ほどお伝えした「割り算の商を分数で表す方法」を使い、分数を割り算に変えて計算します。

以下のような手順で行いましょう。

・2と1/4=9/4=9÷4=2.25
・2と1/4=2+1/4=2+0.25=2.25

【小数から分数へ】

小数から分数にする際は、0.1や0.01が何個なのかを考えると、簡単に分数で表せます。

例:0.31=0.01が31個=1/100が31個=31/100

6年生になると、分数と小数が両方入っている計算を学ぶため、ここで学習した知識が生きてきます。どちらの表し方にも対応できるように慣れておきましょう。

7-6. 分母の異なる分数の足し算・引き算

5年生では、分母の異なる分数について足し算・引き算する方法を学習します。

これまで、2~4年生にかけて段階的に学んできた分数の理解がベースとなります。そのため、分数に苦手意識のあるお子様は、以下の項目を復習しておくとよいでしょう。

・分数の概念:2年生の分数
・分数の足し算・引き算の基礎:3年生の小数・分数を使った計算
・同分母の分数におけるいろいろな足し算・引き算:4年生の分数の足し算・引き算

小学生が、分母の異なる分数の足し算・引き算でつまずきやすい部分は、以下の2点です。

・「分母の数を足してしまう」など、分母の異なる分数の計算ができない
・通分をするときの最小公倍数が見つけられない


・「分母の数を足してしまう」など、分母の異なる分数の計算ができない

分母が違う分数の計算方法がイメージできず、数だけに着目して計算してしまうお子様もいます。例えば、「足し算だから…」と考え、分母同士を足して「1/2+1/3=2/5」と計算するようなケースです。

分母の異なる分数の計算を教える際は、お子様が

・分母が違うと、なぜそのまま足し算や引き算を計算できないのか
・どうしたら計算できるようになるか

を理解できるように、図を使って説明しましょう。

分母の違いによる差を視覚的に捉えられるので、通分する必要性を理解しやすいはずです。

【分母の異なる分数計算イメージ】

お子様に、計算の型として通分することを覚えさせるのではなく、「分数の分母をそろえると、単位分数の何個分かを計算で求められる」と気づかせることが大切です。

・通分をするときの最小公倍数が見つけられない

2つの分数の分母をそろえるための最小公倍数が見つけられず、つまずくお子様もいます。

最小公倍数を見つける際は、分母の数が大きいほうの倍数を書き出し、もう一方の分母の倍数になっている数を探す方法がおすすめです。2つの分母に共通する一番小さな倍数が、最小公倍数です。


例えば、1/3+1/7の通分をする場合は、以下の流れで最小公倍数を探していきます。

・分母の数が大きい「7」の倍数を書き出す
 7の倍数:7、14、21、28、35、42、…・7の倍数のうち、分母の数が小さい「3」の倍数に該当する数を小さい数から順に探す
 7の倍数:7、14、21、28、35、42、… → 21と42が3の倍数と共通・7と3の最小公倍数の「21」で通分する
 計算:7/21+3/21=10/21


この方法で行うと、分母の数が小さいほうの倍数をすべて書き出す必要がありません。両方の分母の倍数を書き出して見比べるよりも、効率よく最小公倍数を見つけられます。

分母の数が小さいほうの倍数から、大きいほうの倍数と一致する数を探すことも可能です。しかし、大きい数の倍数から探したほうが、最小公倍数を見つけるまでの数が少なくすむため、理由もあわせて説明してあげるとよいでしょう。

【大きい数の倍数から見つけると、最小公倍数が早く見つかる理由】例:1/3+1/7の通分・7の倍数:7、14、21、28、35、42、… 
・3の倍数:3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、…7と3の通分を考える際、7の倍数から考えていくと3個目で共通する倍数「21」が見つかります。一方で、3の倍数だと共通する倍数「21」を見つけるまでに、「3、6、9、12、15、18…」と順に確認しなければなりません。

7-7. 2つの量の関係(比例)

伴って変わる2つの量の関係性に着目し、変わり方の特徴を見出す力を身に付けます。6年生で学習する比例・反比例を理解するための重要な単元です。2つの量の変わり方を考察して、表や式を使って表現できるようにしましょう。

2つの量の関係(比例)では、2つの量が伴って2倍・3倍と増えていく簡単な比例関係を学習します。問題文を見て場面をしっかりと捉えることが重要なため、表や数直線を用いて正しく理解するように促します。

以下の流れで、お子様が2つの量の変化を捉えられるように、ヒントを与えながら教えるとよいでしょう。

【例題】
1個120円のパンを買います。パンの個数が1個、2個、3個…と増えると、代金はどのように変わりますか。【教え方】
「2つの量はどう変わるかな」と聞く
お子様が答えられないときは「わかっている数を、表や数直線に書き込んでみよう」と促す



・「となりに並んでいる数を、1つずつ比べてみたらどう?」とヒントを出す
・「気づいたことを、表や数直線の外側に書き込んでみて」と伝え、わかった変化を視覚化する
・「書き込んだ変化から、何がわかるかな?」とお子様に考えさせる
・「わかったことを式にしてみよう」と、2つの量の関係を表す式を立てる

7-8. 単位量あたりの大きさ(量・速さ)

単位量あたりの大きさは、異なる量の比較方法を考える単元です。人口密度やこみ具合を表す2つの数の比較や、速度などを表すために、どうしたら条件をそろえて比較できるかを考えることが大切です。

単位量あたりの大きさは、以下2つの点で苦手意識を持つお子様が多い傾向にあります。

・どう計算したらよいかわからない・速度や距離・時間の問題で間違いが多い

・どう計算したらよいかわからない

問題文の状況を頭の中で整理できておらず、どのような状況で、何を求めたらよいかを式で表せない状態です。

このような場合は、以下の例を参考に「問題で何を聞いているのか」「比べるにはどうしたらよいか」をお子様の言葉で言い換えてもらいましょう。

問題文
ノートを買いに行きました。6冊セットで698円のノートと、5冊セットで569円のノートでは、お得なのはどちらでしょうか教え方の例
「何を求める問題かな」
「わかっていることを絵や図に書いて、整理してみて」
「セットで売られている2つのノートの値段を比べたいんだね」
「どうやったら比べられると思う?」
「1冊あたりの値段がわからないと比べられないね」
「1冊あたりの値段を出すには、どういう計算が必要?」


2つの数を比べるには「単位量あたりの大きさ」を求める必要があると理解させることが大切です。

・速度や距離・時間の問題で間違いが多い

5年生の算数の中でも、速度や距離・時間の問題を苦手に感じるお子様は少なくありません。問題によっては、時間の単位換算や距離の単位換算が必要であり、公式に当てはめるだけでは解けないからです。

例えば、以下の問題では、問題文に書かれている距離の単位が、道のりと速度で異なります。

問題の例:4kmの道のり分速80mで歩いた場合、何分かかりますか?「何分」と問われているため、分速の距離の単位「m」に合わせて、道のりを4km→4000mに変えて計算する必要がある


このような問題は、単純に問題文に出てくる数を公式に当てはめても正しく計算できません。

そのため、お子様が速度や距離・時間の問題を苦手に感じているなら、以下の手順を守って問題を解くよう教えましょう。

【速度や距離・時間の問題を解く手順】・問題文をしっかりと読み、時間と距離の単位を確認する
 【時間の単位:時速・分速・秒速、距離の単位:km・mなど】・数直線を書いて、問題文の情報を整理する・問題文に出てくる時間の単位を合わせる
 【1時間=60分=3600秒】・同様に、距離の単位を合わせる
 【1km=1000m】・公式をもとに式を立て、計算する


急いで解こうとして問題文を飛ばし読みすると、単位を見逃してしまいます。上記の手順に沿って、まずは、問題文をよく読むところから取り組んでください。

7-9. 割合

割合は、5年生の算数の中でもトップクラスで難しい単元です。問題文の表現が難しいことに加え、計算の式を立てる段階でつまずくお子様も少なくありません。

割合では、主に小数のかけ算・割り算を使って計算し、2つの数の関係を比べていきます。そのため、「割合が苦手で、小数のかけ算・引き算にも自信がない」というお子様は、まずは、小数のかけ算・割り算の概念や計算の復習から行うとよいでしょう。

【小数のかけ算・割り算の復習はこちら】

4年生:小数と整数のかけ算・割り算
5年生:小数と小数のかけ算・割り算

割合においてお子様がつまずきやすいポイントは、以下の2点です。

・どの数が「比べられる量」や「もとにする量」なのかわからない・表現が難しく、正しく式を立てられない


・どの数が「比べられる量」や「もとにする量」なのかわからない

問題文に出てくるどの数が、「割合」「比べられる量」「もとにする量」を指すのかを理解できないと、先に進めなくなってしまいます。

問題文を精読し、「比べられる量」が「もとにする量」の「どれくらいの割合」かを丁寧に整理してから解くことが大切です。

以下の流れで、お子様が問題文を読み解く手助けをしてあげましょう。

「問題文を読んだら線分図を引いてみよう」と声をかける
・もとにする量や比べられる量、割合などの数を線分図に書き込めているか見守る・書けていない場合は「どの数を比べたいのかな」「もとにする量は、比べる基準になる数のことだね」など、質問やヒント形式で考えることを促す・「比べやすいように、線分図のもとにする量のところにも割合を入れておこう」(問題文で割合が提示されている場合)・線分図のもとにする量のところに「1」を書けているか確認する・「この問題で、求める数のところはどこ?」と聞き、□を書いて位置を確認する・「線分図に書きこんだ情報を見ながら、割合の式を作ってみよう」と促す・迷うようなら「比べられる量はもとにする量の何割か(何倍か)を考えてみて」と伝える

・表現が難しく、正しく式を立てられない

割合の問題では、以下のような問題も出題されます。

・300円で仕入れた品物に、6割の利益を乗せて販売するときの定価を計算してください・仕入値の25%の利益を見込んで、720円の定価を付けました。仕入値はいくらですか?・定価720円で売れ残ったため、定価から15%値引きしました。値引き後の売値はいくらですか?


このような問題の表現をスムーズに理解できず、式を立てる際に間違えてしまうお子様も少なくありません。

例えば、先ほど紹介した1つ目の問題の場合、「仕入れた品物に利益を乗せて販売する」という問題文の理解に注意が必要です。

・300円で仕入れた品物に、6割の利益を乗せて販売するときの定価を計算してください


問題文を理解できないと、間違えて以下のように読み取ってしまいます。

・もとにする量:仕入れた価格(300円)・比べられる量:定価→□・割合:6割(60%)


しかし、「6割の利益を乗せて販売する」とあるので、正しくは、もとにする数1に6割を乗せた割合「1.6割(160%)」が正しいのです。

同様に、「定価から15%値引きしました。値引き後の売値はいくらですか?」という問題は、定価を1としたとき1-0.15(15%)=0.85。つまり、「定価(もとにする量)の85%で売った」ことを読み解く必要があります。

問題文を確実に理解するには、

・たくさんの問題に触れて、表現に慣れる
・線分図を書いて線の位置と計算の答えに矛盾がないかチェックする

ことが必要です。

慣れるまでは時間がかかりますが、スムーズに理解できるようになれば解くスピードも上がります。お子様が割合に苦手意識を持たないように、根気強く見守りましょう。

8. 【単元別】小学6年生への算数の教え方

6年生になると、5年生までに学習した、さまざまな知識や考え方を土台に、より発展的な知識を学習していきます。

特に、つまずいてしまうお子様が多い単元は

・比(割合の表し方)
・比例・反比例
・分数の計算

でしょう。

文字と式、比例・反比例などは、中学校で学ぶ単元の理解につながるため、お子様が理解していない部分が残らないようサポートしてあげましょう

6年生で学習する単元の一覧は、以下の通りです。

6年生で学習する主な単元
文字と式(xやyを使った表現)分数のかけ算・割り算(分数と整数、分数と分数)比(割合の表し方)
縮図や拡大図、対称な図形円の面積、立体(円柱・角柱)の体積比例・反比例
起こり得る場合(並べ方・組み合わせ方)


各単元でつまずきやすい部分の教え方を1つずつ解説します。

8-1. 文字と式(xやyを使った表現)

文字と式の単元では、文字を使って数量の関係を簡潔に表現したり、読み解ったりする力を身に付けます。

これまで用いてきた言葉や記号を使った式を、xやyなどの文字で表せること、さまざまな場面で活用できることを学びます。中学校で学習する、文字式の基礎にあたる単元です。

文字と式では、見慣れないxやyを使って式を立てることに戸惑うお子様が多くいます。

例えば、「120円のりんごを5個、140円のみかんをx個買い、代金はy円です。」という問題を式に表すときに

「x個って何?」
「y円ってどういうこと?」

と混乱してしまい、問題文の状況を理解できなくなってしまうのです。

このような場合は、具体的な数を入れて式を立ててみる方法がおすすめです。以下のように、仮の数を入れた式を立て、その後、式をxやyに置き換える流れで教えましょう。

「x個じゃなくて、みかんを3個買った場合で考えると、どんな式になる?代金も計算してみて」
「120×5+140×3=1020だね」
「問題だと、みかんを買った個数がxになっているから、式のどこにxを入れたらいいかな」
「yの位置も考えてみよう」
「じゃあ、式はどうなる?」


特に、問題文に単位や小数、何倍といった表現が出てくると、余計に混乱してしまいます。遠回りに感じるかもしれませんが、考え方に慣れたら問題文を見て直接式を立てられるようになります。まずは、xやyを使って数の関係性を表現できるように、考え方を教えましょう

8-2. 分数のかけ算・割り算(分数と整数、分数と分数)

分数のかけ算・割り算は、苦手に感じるお子様が非常に多い単元です。

これまで学習してきた、分数やかけ算・割り算に関する理解がベースになります。特に、5年生で学習した通分と約分割り算と分数の関係は、6年生で分数のかけ算・割り算を学習する前にマスターしておきたいポイントです。

分数のかけ算・割り算は、「なぜそうなるのか」をしっかり理解していないと、中学生の学習や高校受験にも大きく影響してしまいます。学習内容を確実に身に付けるため、考え方を理解した上で練習問題に取り組みましょう。

6年生で学習する分数のかけ算・割り算でつまずくお子様が多いのは、以下の2つです。

・分数×分数で、分子同士・分母同士をかける理由がわからない・分数÷分数の計算で、なぜ「割る数の逆数」をかけるのか理解できない


・分数×分数で、分子同士・分母同士をかける理由がわからない

分数×分数の計算では、分子同士・分母同士をかけて計算します。計算方法に迷ってしまうお子様は、面積図を書くと視覚的に理解しやすいためおすすめです。

例えば、4/5×2/3の計算を面積図にすると、以下の通りです。

【面積図の例:4/5×2/3】


4/5は、言い換えると「1/5が4個分」を表します。これに2/3をかけるため、「1/5の4個分」を1/3にした「1/15」が4個分。かける数は2/3(1/3にしたものが2個分)なので、1/15の4個分×2と言い換えられます。

つまり、分数×分数は、分子同士・分母同士をかけ算すると計算できることがわかるでしょう。

・分数÷分数の計算で、なぜ「割る数の逆数」をかけるのか理解できない

「分数÷分数で、割る数の逆数をかける意味がわからない!」と感じるお子様は少なくありません。細かく説明をすると複雑で余計に混乱してしまう可能性があるため、覚えるように言われて納得できないお子様もいるでしょう。

分数÷分数の計算で割る数の逆数をかける理由は、「計算を簡単にするため」と考えるとよいでしょう。分数÷分数をそのまま計算して答えを出す過程を理解すれば、逆数をかけたほうがスピーディーに計算できることに納得できるはずです。

解き方が少しわかりにくいため

・数直線
・計算

の2つのパターンで解説します。お子様が理解しやすいほう・納得できるほうで説明してあげてください。

まずは、以下の問題を例に数直線で説明します。

【例題】2/3dLペンキで2/7m2の壁を塗れました。1dLのペンキで塗れる壁の面積は何m2ですか?


【分数÷分数で割る数の逆数をかける理由:数直線で解説】

上の問題を解く式は、2/7÷2/3です。

立てた式「2/7÷2/3」の解き方を、数直線を使って順に説明すると、

手順1:2/3を整数にして考えるために、3をかけて「2dLで塗れる面積:6/7m2」を計算する
手順2:問題で問われている「1dLで塗れる面積」にするため、2で割って答え「3/7m2」を出す

という流れで計算できます。

計算するために「3をかけて2で割る」ことになり、結果的に2/7÷2/3は、逆数をかける2/7×3/2と同じ計算をしていることがわかります。

また、計算で導く方法は、以下の通りです。

【分数÷分数で割る数の逆数をかける理由:計算で解説】

割り算の性質として、割られる数と割る数の両方に同じ数をかけたり割ったりしても、同じ結果になることをこれまで学習してきています。

例えば、以下の計算も、割り算の性質をもとに計算しています。・小数の割り算で、割る数を整数にするため小数点を移動する
・通分で分数の分母をそろえるため、分子と分母に同じ数をかける
・分母と分子を同じ数で割って約分するお子様が理解できていないようなら、小数と小数のかけ算・割り算や教科書に戻って復習しましょう。


そこで、2/7÷2/3の計算をする際、割られる数と割る数の両方に、割る数の逆数(3/2)をかけます。
【式:2/7÷2/3=(2/7×3/2)÷(2/3×3/2)】

すると、割る数が整数「1」になりました。
【式:(2/7×3/2)÷6/6=(2/7×3/2)÷1】=2/7×3/2

1で割っても結果は変わらないため、計算からも2/7÷2/3=2/7×3/2になることが導き出せます

「なぜそうなるのか」をしっかりと理解できていれば、「公式」や「解き方のルール」を忘れてしまっても問題に対応できます。自分で考える力が身に付くため、難しい問題の解き方で迷ったときにも、役立つでしょう。

8-3. 比(割合の表し方)

6年生の比(割合の表し方)では、2つの数量の割合を比で表したり、図や式で比べたりする方法を学びます。

5年生のときに学習した割合とつながる内容なので、割合の理解が不十分だとつまずく可能性が高まります。教える際にお子様が理解していないようなら、5年生の割合を復習してください。

比を苦手に感じるお子様は、2つの数の関係を比や割合で表現できずにつまずくケースが多いでしょう。

・割る数と割られる数が逆になってしまう
・比べる数に割合をかけて答えを出そうとする

といった間違いが多く見られます。

このような間違いは、問題文から状況がイメージできておらず、もとにする量・比べる量がどのような関係になっているのかを把握できていないことが原因です。

例えば、以下の問題で400mlに「2」や「3」の比をかけて答えを出そうとしたり、濃縮つゆを400mlとして、水の量を計算したりしてしまいます。

【例題】
そうめんのつゆを作るときは、濃縮つゆと水の比を2:3で薄めます。400mlのそうめんのつゆを作るには、それぞれ何ml必要でしょうか?


お子様が問題の状況を把握できておらず、正しい式が立てられないときは、線分図や絵を使って問題文の示す数をまとめ、状況を整理してから式を立てるように教えてください。

先ほどの問題を例に教え方を具体的にお伝えすると、以下のようになります。

【例題】
そうめんのつゆを作るときは、濃縮つゆと水の比を2:3で薄めます。400mlのそうめんのつゆを作るには、それぞれ何ml必要でしょうか?【教え方】
・「問題文からどんなことがわかる?」「比の2:3ってどういうことかな」と問題文の状況を声に出して表現させる・「そうめんのつゆを作るときは、水のほうが量が多いんだね」「問題文では、何を聞かれているの?」など、わかったことや求めることを確認する・「問題に書かれていることをわかりやすくまとめてみて」「どんな方法があるかな?」と伝え、線分図や絵を使って表せるか考えさせる・わかっている情報が正しくまとめられると確認できたら「式を立ててみよう」と促す


問題文を丁寧に読み解き、状況をイメージするために線分図や絵を活用しましょう。もとにする数や対応する数をまとめてから式を立てれば、迷うことが減るはずです。

8-4. 縮図や拡大図、対称な図形

縮図や拡大図、対称な図形では、さまざまな図形の特徴を知ることで図形への理解を深め、多彩な見方ができる感覚を養います。

線対称は図形を折りたたむイメージ、点対称は回転させるイメージを頭の中でする必要があります。図形な苦手なお子様は、図形を動かすことを頭の中だけでイメージすることが難しいので、具体物を用意してあげると助けになるでしょう。

縮図や拡大図、対称な図形でつまずきやすいポイントは、以下の2点です。

・線対称・点対称な図形を見分けたり書いたりできない
・地図の縮尺の問題を苦手に感じる

・線対称・点対称な図形を見分けたり書いたりできない

線対称・点対称な図形は、「こういう性質がある」と言葉で説明するよりも、手を動かして図形に触れる機会を増やしたほうがイメージしやすくなります。そのため、お子様の身近なものを使って見分けたり書いたりする練習を行いましょう。

おすすめなのは、アルファベットを使って練習する方法です。アルファベットには、「線対称」「点対称」「どれでもない」の3種類に加え、「線対称と点対称の両方」に当てはまるものもあります。視点を変えて図形を見る必要があるため、お子様の理解度を把握しやすいでしょう。「身近なものに対称な図形があるんだ」と気づくきっかけにもなります。

【線対称・点対称】アルファベットの見分け一覧
線対称A、B、C、D、E、K、M、T、U、V、W、Y
点対称N、S、Z
線対称・点対称の両方H、I、O、X
どれでもないF、G、J、L、P、Q、R


線対称・点対称な図形を教えるときの流れを、具体的に記載します。

【線対称・点対称な図形を見分ける】・紙にアルファベットを大きく印刷しておく
・「線対称・点対称ってどういう図形だったかな」とお子様の理解を確認する・「アルファベットにも線対称と点対称なものがあるよ、分類してみよう」と伝える・分類したものを見ながら、線対称・点対称の特徴に当てはまることを確認していく・「どうして対象だとわかったの?」などと聞きながら、お子様自身に誤りやモレを気づかせる
【線対称・点対称な図形を書いてみる】

・間違ってしまったアルファベットを中心に、親御様が対称な図形の半分を書いてあげる
・「線対称(点対称)な図形を書いてみよう」と伝える・書けずに混乱するときは「対応する点をわかりやすくする方法はないかな」と聞く・対応する頂点に印を付けたり、ペンの色を分けたりする工夫をお子様から引き出す

なお、NとMは線対称で描くとMに、点対称で書くとNになるため、書くことで線対称と点対称の理解がより深まります。Mの中心を下げ過ぎてしまうと点対称にならないので、親御様が左側を書き、お子様に渡してあげましょう。

・地図の縮尺の問題を苦手に感じる

拡大図や縮図は理解できても、縮尺になると一気にわからなくなってしまうお子様が増えます。

縮尺の問題には、大きい数や単位の変換が出くるため苦手意識を持つお子様もいますが、順を追って考えていけば難しくありません。まずは、縮尺の「1/1000」や「1/50000」がどのような状態を表すのか感覚を掴みましょう。

縮尺が上がるとどんどん小さくなっていく感覚を身に付けるには、インターネット上の地図を見ながら縮尺を変える方法がおすすめです。地図では同じ1cmでも、縮尺が上がると実際の長さが変わることを理解できます。

縮尺の感覚が掴めたら、あとは、計算の問題です。「地図上の5.2cmは実際の何mか」を考える方法は1つではありません。単位を合わせることに注意して、比で考えたり、線分図を書いたりしながら計算させましょう。

8-5. 円の面積、立体(円柱・角柱)の体積

円の面積、立体の体積の授業では、それぞれの求め方を理解し、複雑な形の図形にも対応できる思考力を養います。

これまで学習してきた知識をもとに、さまざまな見方で図形を捉え、円の面積や角柱・円柱の体積の求め方を身に付けていきます。そのため、お子様が基礎的な図形の構造や特徴、面積の求め方などをすぐに答えられないと感じた場合は、以下の項目を教科書やノートを見ながら復習しておきましょう。

【円の面積】
・3年生:円と球の構成・性質
・5年生:三角形と四角形の面積
・5年生:正多角形と円周の基礎的な知識【角柱・円柱の体積】
・5年生:直方体・立方体の体積


6年生の円の面積、立体の体積の単元でつまずいてしまうお子様には、図形を見てわかることを一つひとつ書き込んでいくように教えましょう。

6年生の面積・体積の授業では、

・2つの円を重ね、重なった部分だけの面積を求める
・直方体の一部がかけた図形の体積を求める

など、単純に公式を覚えるだけでは対応できない問題が増えてきます。

そのため、線を引いて図形の見方を変えたり、学習した図形の性質などの知識を組み合わせたりして解くことが重要です。複雑に見える複合図形も、見方を変えるとこれまで学習してきた考え方を使って解けることに気づけるはずです。

教える際は、図形の形をなんとなく判断してしまわないよう、

・辺の長さが同じ印
・角度がわかっている部分
・角度が同じ印
・図形を分割したときの各辺の長さ

などを、書き出すように促してください。

複雑な図形でも、考えを書き出すことで新しく気づくことがあります。補助線だけでなく、考えを整理するために簡単な図形を書き残しておくと、計算の工程で混乱せずに解けるはずです。

特に、図形が苦手なお子様は、頭の中で考えていると見逃しが起こる可能性が高まります。視覚的に確認できるよう、積極的に書き出していくことが大切です。

複雑な図形は、図形の集合体と捉えると計算で面積・体積を求めやすくなります。

・かけている部分を含めて計算し、かけている部分の面積・体積を引く
・図形をいくつかの構造を分けてそれぞれ計算し、合計を求める

のどちらの方法でも、導き出す結果は同じです。

どちらの方法もスムーズに思い浮かぶようになると、お子様が問題に合わせて計算しやすい方法を選べます。解いているところを見守りながら「他にはどんな解き方があるかな?」などと声掛けをしてあげるとよいでしょう。

8-6. 比例・反比例

5年生では、表を横に見て2つの数の関係性を考える、簡単な比例の関係を学習しました。6年生で学習する比例・反比例では、2つの量の関係性を表の縦・横の両面から把握し、全体の関係性を考察していきます。

6年生で学習する比例・反比例でつまずくお子様が多いのは、以下の2点です。

・比例と反比例、それ以外を見分けられない・表から2つの数量の関係を表す式を立てられない

・比例と反比例、それ以外を見分けられない

以下のように、比例と反比例の性質を理解できておらず、見分けられないケースです。

【性質を理解できずに見分けられない例】

「100gの缶にクッキーを入れた場合、クッキーの枚数と全体の重さは比例するか」という問題に、「枚数が増えると重さも増える。どちらも増えていくことから比例だ」と判断してしまう。
→クッキーの枚数とクッキーの重さは比例関係にありますが、クッキーが増えても缶の重さは増えません。そのため、クッキーの枚数と全体の重さは比例しません。

このような場合、比例と反比例の性質を十分に理解できていないと考えられます。問題文に書かれている内容を表にまとめ、それぞれの性質に当てはまるかを丁寧に見ていきましょう

例えば、比例であれば以下のような性質があります。

・表を横に見ると、一方の数が2倍、3倍…になると、もう一方も2倍、3倍…になる
・表を縦に見ると、一方の数に一定の数をかけた数が、もう一方の数になっている
・グラフに表すと、原点を通る直線になる
・式で表すと、y=決まった数×xで表せる


まずは、「比例の性質ってどんなものがあったかな」と声をかけ、それらの性質をお子様が確実に理解しているかを確認してください。お子様が理解できていることがわかったら、「じゃあ表を横に見てみようか、どうなっている?」「縦はどうかな?」と順を追って確認するよう促します。

比例・反比例をぼんやりとした理解のままで放置すると、中学校で学習する比例・反比例、関数の理解に影響が出ます。お子様が比例と反比例、それ以外を見分けられずに間違えることがあるなら、この機会に確実に習得しておきたいポイントです。

・表から2つの数量の関係を表す式を立てられない

問題文を見て表の作成まではできるものの、関係を表すための式を作れずに迷うお子様もいます。

一部分の変化だけに着目してしまうと、2つの数量を全体で捉えられません

変化の決まりや対応の決まりをお子様自身が見つけられるように、以下の流れで考えるサポートをしてあげましょう。

・「表を横に見て、変化に決まりがあるか確認してみて」
・「表を縦で見ると、対応する数はどう変わっている?どんな差がある?」
・「対応する数に共通する決まりがないか、表全体を見てみよう」
 (2倍になっている、1/2になっているなど)
・「共通する変化を式に表せないかな」
・「式が合っているか確認する方法はある?」
・「表の中の数を使って計算したら、式が合っているかわかるね」

8-7. 起こり得る場合(並べ方・組み合わせ方)

起こり得る場合の授業では、樹形図や表などを使って情報を洗い出し、順序だてて整理する力を養います。

起こり得る場合で学習することは、中学校の確率の理解につながる大切な内容です。問題文で提示された条件を読み解くことが重要なため、教える際はお子様にじっくりと考えるよう促しましょう。

お子様への教え方で大切なのは、以下の2つです。

・問題文をよく読み、書かれている条件を理解する
・順序を決めて洗い出す

・問題文をよく読み、書かれている条件を理解する

問題を解く際は、問われている条件に合わせて抜け漏れや重複がないように考える必要があります。そのため、問題文を正しく読み解くことは欠かせません。

ご家庭で教えている際にお子様が問題文を理解できていない、飛ばし読みしていると感じるときは、音読をさせましょう。

起こり得る場合の問題文では、

・順番を決める
・グループを作る
・〇桁の整数を作る

など、さまざまな条件で何通りあるかを問われます。

表現が少し違うだけで考え方を変えなくてはならないため、問題文をしっかり読むことが非常に重要です。

以下のA・Bの問題を例に、問題文の条件を把握する重要性を説明します。

【起こりうる場合:問題例】A:0、1、2、3の数字が書かれたカードを3枚使って、3桁の整数を作る
B:0、1、2、3の数字が書かれたカードを3枚使って、3つの数の並びを作る


Aの問題文の場合は、「0」を最初に選ぶ場合を外して考える必要があります。百の位に「0」が入る3桁の整数はないからです。しかし、Bの問題文の場合は数を並べることを目的としているため、「0」を最初に選ぶ場合も含めて回答する必要があるのです。

・順序を決めて洗い出す

並べ方や組み合わせ方を書く際は、思い付くまま書き始めることは避けましょう重複や抜け漏れが出てしまうため、考える順序や書く順番を決めてから書き始めることが大切です。

例えば、「コインを3回投げたときの表と裏の出方は何通りあるか」という問題の場合、以下のように考える順番を決めてから1つずつ書き出します。

【考える手順 例】手順1:1回目と2回目をで固定し、3回目の出方を考える
手順2:1回目を、2回目をで固定し、3回目の出方を考える
手順3:1回目を、2回目をで固定し、3回目の出方を考える
手順4:1回目と2回目をで固定し、3回目の出方を考える

【コイン3回投げたときの出方】

1回目2回目3回目

書き出す前に手順を決めて行うことで、重複や抜け漏れが起こる可能性が下がります。

また、問題に出てくる人の名前などは、そのまま考えると書き出すときに混乱するもととなります。簡易的に頭文字やアルファベットに置き換えて考えるなど工夫することもおすすめです。

9. 「教え方に迷う」「上手に教えられない」という場合は塾を活用しよう

ここまで、

・全学年に共通する教え方の基本
・算数に必要な4つの力
・学年別の単元ごとの教え方

を解説してきました。

「自分が小学生だった頃は算数も数学も得意だったから、うちの子に小学校の算数を教えるなんて簡単!」

と考える親御様も、中にはいるかもしれません。

しかし、実際にお子様に教えようとすると、意外と難しいことに驚く方も多いはず。

親御様にとっては過去に学んだ内容とはいえ、お子様がしっかり理解できるように教えるのは簡単なことではありません。高学年になると内容もどんどん難しくなります。

この記事を読んで

「算数の教え方に自信がない…、ちゃんと教えられているか不安」
「良くないと思っているのに、教えているうちについ強い口調になってしまう」

このように感じたなら、塾を活用することも検討してみてください。

算数の教え方に悩む親御様に、塾をおすすめする理由は2つあります。

算数の教え方に悩む方に塾をおすすめしたい理由2つ
・経験豊富な講師が、お子様の学習サポートをしてくれる
・親御様の教える負担が減り、お子様も集中しやすい環境で勉強できる

1つずつ解説します。

9-1. 経験豊富な講師が、お子様の学習サポートをしてくれる

塾をおすすめする一番のポイントは、経験豊富な講師にお子様の学習サポートを任せられる点です。

実際に、親御様が算数を教えるときには

「どこからどう説明すればいいか迷ってしまう」
「子どもがどこを理解できないのかわからない」

というケースもあるでしょう。

大人にとっては当たり前に思える部分でも、お子様にとっては初めて学習する内容であり「どうして?」と疑問を持つことは多々あります。親御様が算数を理解していても、お子様が納得できるように教えるためには別のスキルが必要です。

塾の講師は、お子様が理解しやすい形で教えるスキルを持っており、多くのお子様に指導してきた経験から、小学生がつまずきやすいポイントも熟知しています。お子様が理解していない部分を的確に把握し、それに応じた指導を行うため、学習する内容をよりスムーズに理解できるでしょう。

9-2. 親御様の教える負担が減り、お子様も集中しやすい環境で勉強できる

お子様に算数を教えるのは、親御様とお子様の双方にとって大きな負担になることも少なくありません。

家事や仕事で忙しい毎日の中で、お子様とじっくり向き合って算数を教える時間を作るのは簡単ではありませんよね。

「忙しくて、子どもが考えている時間を待っているのがもどかしく感じる」
「昔学習した内容を忘れていて、自分が一度復習してからでないと子どもに教えられない」

といった経験がある方もいるのではないでしょうか。

家庭での学習は、親子の気持ちの距離が近いことで感情的になりやすく、つい厳しい言葉をかけてしまうことがあります。お子様も、自宅や親御様の前では甘えが出て集中できないことも多いでしょう。このような状態のまま無理に自宅で教え続けても、親子ともにストレスを感じ、学習効率も下がります

塾を利用すれば、親御様が算数の教え方に悩んだり、教える時間を確保したりする必要がありません。お子様にとっても、塾という勉強に特化した環境に身を置くことで気持ちの切り替えがしやすくなり、学習に集中できるようになります。

親御様とお子様の両方にメリットがあるため、算数を教えることに負担を感じている方は、この機会に塾を検討するとよいでしょう。

お子様への算数の教え方にお悩みなら、湘南ゼミナールにお任せください!
湘南ゼミナールでは、お子様の知的好奇心を刺激する楽しい授業で、算数の学習をしっかりサポートいたします。小学生のお子様が塾に通う際は、塾の楽しさも重要です。塾に行くことが楽しく感じられれば、学ぶ意欲も自然と高まるからです。湘南ゼミナールには明るく楽しい講師が多数在籍しており、お子様の興味や関心を引き出しながら、算数を「楽しい!」と感じてもらえる面白い授業を提供します。算数に苦手意識があるお子様や、新しい単元で急にわからなくなってしまったお子様も、安心してご相談ください。湘南ゼミナールでは、お子様の進路や希望に合わせて塾を活用いただけるよう、以下3つのコースをご用意しています。・お子様の理解度に合わせて指導できる「個別指導コース
・中学進学を見据えて基礎学力アップを目指す「総合進学コース
・専門授業で志望校合格を目指せる「公立中高一貫コース」お子様や親御様が落ち着いて塾を検討できるよう、無料体験も実施中です。実際に、授業の雰囲気や内容を1ヵ月間無料で体験していただけるため、塾通いを迷っている方も安心してスタートできるでしょう。この機会にぜひ、以下のサイトからお問い合わせください。

10. まとめ

この記事では、小学生のお子様に対する算数の教え方を知りたい親御様に向けて、

・小学生に算数を教える際に重要な「教え方の基本」
・家庭で算数を解くための能力を伸ばす方法
・各学年の単元別の具体的な教え方
・教え方がわからず困る方に向けた、塾の有用性

を解説しました。

最後に、この記事の内容を要約します。

小学生に算数を教えるときは、教え方が非常に重要です。以下の「教え方の基本」を押さえておかないと、お子様が算数を嫌いになったり、真面目に勉強に向き合わなくなったりする危険性が高まります。

【全学年共通】小学生に算数を教える際の「教え方の基本」5つ
・お子様が学校で教わった解き方・考え方に沿って教える
・身近なものや日常生活と結び付けて説明する
・「わからなくて当然」と考え、解く過程をほめる
・一方的に解き方や答えを教えるのは避ける
・余計なプレッシャーを与えない

算数を解くには、土台となる4つの能力が必要です。

算数を解くための土台となる能力4つ
思考力【筋道を立てて考え、問題を解決していく力】・数の関係性を理解し、問題を解く方法や式を考えられる・与えられた情報や条件を考えて使いこなせる・問題解決に向けて粘り強く考えられる
計算力【式を速く正確に解くための力】・足し算・引き算・かけ算・割り算の計算、小数や分数を使った計算を正確に解ける
読解力【問題を正確に読み解く力】・文章問題や式で示されている情報を正しく捉えられる・解答で何を求められているのかを正しく理解できる
空間認識力【ものの形や大きさ、距離感を把握する力】
・図形の形を頭の中でイメージできる
・展開図を見て、組み立てたときの立体をイメージできる

これらの4つの能力は、算数の学習だけで伸ばすことは難しく、さまざまな経験によって複合的に養われます。そのため、日常生活の中で算数の土台となる能力を鍛えようと意識することが重要です。

また、親御様がお子様に算数をわかりやすく教えるのは、簡単なことではありません。高学年になると内容もどんどん難しくなるため、

「算数の教え方に自信がない」
「きちんと教えられるか不安…」

という場合は、必要に応じて塾も検討しましょう。

小学生に算数を教えるときは、教え方に気をつけることでお子様のモチベーションが上がり、諦めずに考える力が身に付きます。つまずきやすいポイントは学年や単元によって異なるため、解説でお伝えした説明方法や重要項目を、お子様に教えるときの参考にしてください。

この記事が、お子様に算数を教えるときのお役に立つことを祈っています。