湘ゼミコラム

高校受験・入試

公立志望でも情報収集を!県立高校改革で変わった点は?/各校が「求める生徒像」を公開

社会のグローバル化や価値観の多様化に適応できる人材育成のため、神奈川県教育委員会では「県立高校改革」を進めています。

2023年度(令和5年度)までに実施される「県立高校改革実施計画Ⅱ期」における、改革の3つの柱は次のとおりです。

1:生徒の多様性を尊重し、個性や能力を伸ばす、質の高い教育の充実
2:魅力ある学校づくりを一層推進する、学校経営力の向上
3:少子化社会の中で生徒に望ましい教育を推進する、県立高校の再編・統合 

この計画に伴い、「学力向上進学重点校」や「グローバル教育研究推進校」「理数教育推進校」など、高校ごとにあらゆる取り組みが実施されています。

本記事では、県立高校改革により多様化する高校の中から、お子様にとって適した高校を選ぶための情報収集の方法をご紹介します。

公立高校は「どこも同じ」は時代遅れ
学校ごとの取り組みに注目。

「県立高校改革」により、高校ごとに県からの指定を受けて特徴のある教育を推進していく動きが加速しています。
“ 普通科であればどこも教育内容は同じ ” という時代ではなくなってきているといえるでしょう。

県立高校改革では、質の高い教育の充実を図り、2022年度(令和4年度)から15項目の指定校等を設けて、次のような取り組みを実施しています。

1〜3:教育課程研究開発校

1、シチズンシップ教育 6校
 指定校
 城郷、瀬谷、瀬谷西、藤沢総合、小田原東、相模田名 

他者と協力しながら、社会の一員として主体的に課題に取り組む姿勢を身につける教育。指導計画や教材等を研究開発する。

2、学習評価 5

指定校 新城、松陽、逗葉、平塚農商、上溝 

教員が学習指導の改善を図り、生徒が自己の振り返りをとおして次の学び  に向かえるような学習評価のあり方について研究する。

3、総合的な探究の時間 ※SDGsテーマ展開校含む11校

指定校 市ケ尾、横浜清陵、藤沢西、秦野総合、大和、津久井
(※SDGsをテーマとした展開校は以下)
川崎、舞岡、横須賀南、山北、有馬

生徒自ら課題を発見し、解決する探究の学びについて研究する。5校の指定校では、SDGsをテーマとした展開について取り組む。

4:授業力向上推進重点校 5校

指定校 元石川、横浜立野、追浜、秦野曽屋、上溝南

先進的な指導方法を取り入れた授業づくりに取り組み、県立高校全体の授業の改善を目指す。

5:ICT利活用授業研究推進校 5校

指定校 生田東、横浜南陵、藤沢工科、伊勢原、城山

タブレット端末等のICT機器を活用し、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習に取り組む。校全体の授業の改善を目指す。

6:プログラミング教育研究推進校 5校

指定校 住吉、横浜栄、茅ケ崎西浜、西湘、相模原総合

プログラミング学習をとおして、論理的な思考力や課題解決力を育てる研究に取り組む。

7:確かな学力育成推進校 5校

指定校 住吉、横浜栄、茅ケ崎西浜、西湘、相模原総合

プログラミング学習をとおして、論理的な思考力や課題解決力を育てる研究に取り組む。

7:確かな学力育成推進校 5校

指定校 菅、永谷、寒川、平塚湘風、愛川

学習意欲向上のため、学び直しの学習と少人数指導に積極的に取り組む。

8:学力向上進学重点校 ※エントリー校含む18校

指定校 横浜翠嵐、川和、柏陽、湘南、厚木

(※学力向上進学重点校エントリー校は以下13校)
多摩、希望ケ丘、横浜平沼、光陵、横浜国際、横浜緑ケ丘、横須賀、鎌倉、茅ケ崎北陵、平塚江南、小田原、大和、相模原

国内や国際社会でリーダーとして活躍できる資質・能力をもった人材を育てるための高い学力と豊かな人間性・社会性の習得に取り組む。

9:STEAM教育研究推進校 5校

指定校 神奈川工業、光陵、横須賀、秦野、相模原弥栄

教科横断的な教育課程や指導方法、学習プログラムなどの研究開発に取り組む。

10:理数教育推進校 4校

指定校 生田、横浜緑ケ丘、鎌倉、小田原

国際的に活躍できる科学技術系人材の育成を図るため、生徒による実践的な科学研究を行い、その成果の普及に取り組む。

11:グローバル教育推進校 5校

指定校 神奈川総合、横浜氷取沢、鶴嶺、大磯、大和西

英語のコミュニケーション能力を高め、国際的な視野で多様な価値観を受容できる力の育成に取り組む。

12:国際バカロレア認定校 1校

指定校 横浜国際 (※2018年度に国際バカロレア認定校に認定)

国際的に認められている大学入学資格「国際バカロレア資格」が取得可能なディプロマ・プログラムを展開し、グローバル人材の育成に取り組む。

13:インクルーシブ教育実践推進校 14校

指定校 城郷、霧が丘、川崎北、上矢部、津久井浜、湘南台、茅ケ崎、二宮、伊勢原、足柄、厚木西、綾瀬、上鶴間、橋本

知的障がいのある生徒が高校教育を受ける機会を広げながら、全ての生徒が共に学び、相互理解を深める教育に取り組む。

14:通級指導導入校 4校

指定校 生田東、横浜修悠館(※他校通級指導導入校)、保土ヶ谷、綾瀬西

発達障がい等のある生徒が通常の学級で共に学びながら、必要に応じて特別指導(自立活動)をつける「通級による指導」に取り組む。

15:コミュニティ・スクール ※県立高校全校

地域住民や保護者等が参画できる、地域とともにある学校づくりの仕組み
※取組事例はこちら 

※指定校に関する情報:神奈川県教育委員会 令和3年12月公表リーフレットより作成

2022年度(令和4年度)より、高校でも全面実施となった新学習指導要領で求められる資質・能力の育成に向けて、神奈川県内でも全ての高校で、ICT整備や教科や科目等の枠組みを超えた「総合的な探究の時間」をはじめとする探究的な学びの取り組みを強化しています。

この「総合的な探究の時間」では、グローバル化に伴い、SDGsの17のゴールを探究課題の切り口にして取り組む高校もあります。

しかし、新学習指導要領実施以前の、高等学校の「総合的な学習の時間」の在り方については、学校ごとの格差や実施計画・評価体制に適切に取り組めていない学校があるとの調査結果が文部科学省より発表されていました。

※「総合的な探究の時間」は、2022年度以前までは「総合的な学習の時間」という名称であったため、ここでは「総合的な学習の時間」と記載しています。

各学校の説明会やパンフレット等で、「総合的な探究の時間」に対する取り組みにも注意深く目を向けて見ると良いでしょう。

2023年度(令和5年度)以降の
再編・統合、専門学科の改編による変化

少子化が進むなか、神奈川県内の県立高校の再編・統合の取り組みも順次実施されています。
2023年度(令和5年度)以降の高校入試に関わる変化は次のとおりです。

※神奈川県教育局総務室 令和4年4月発表情報より

2023年度(令和5年度)より新たに開校する高校 ※統合

■瀬谷高校/瀬谷西高校 の再編・統合

瀬谷高校の敷地・施設を活用し、新しい高校となる。
※単位制普通科を新たに設置

(2022年度 現在)

・現高2・高1生は瀬谷高校で入学→新しい高校で卒業
・現中3生は新しい高校で入学・卒業

■逗葉高校・逗子高校 の再編・統合

逗葉高校の敷地・施設を活用し、新しい高校となる。

(2022年度 現在)

・現高2・高1生は逗葉高校で入学→新しい高校で卒業
・現中3生は新しい高校で入学・卒業

2024年度(令和6年度)より新たに開校する高校 ※再編・統合

■厚木東高校/厚木商業高校 の統合

厚木東高校の敷地・施設を活用し、新しい高校となる。
※普通科と専門学科を新たに併置

(2022年度 現在)

・現高1・中3生はそれぞれの高校で入学→新しい高校で卒業
・現中2生以降は新しい高校で入学・卒業

■城山高校/相模原総合高校 の統合

城山高校の敷地・施設を活用し、新しい高校となる。

(2022年度 現在)

・現高2・高1生は城山高校で入学→新しい高校で卒業
・現中3生以降は新しい高校で入学・卒業

※県立高校改革実施計画Ⅱ期では、2022年度(令和4年度)現在までに、以下の高校も再編・統合されています。

・横浜氷取沢高校(氷取沢高校/磯子高校 の統合)※2020年度(令和2年度)開校
・横須賀南高校(横須賀明光高校/大楠高校 の統合)※2020年度(令和2年度)開校
・相模原弥栄高校(弥栄高校/相模原青陵高校 の統合)※2020年度(令和2年度)開校
・平塚農商高校(平塚農業高校(全日制)/平塚商業高校(全日制) の統合)※2020年度(令和2年度)開校
・高浜高校(平塚商業高校(定時制) の移行)※2020年度(令和2年度)併置
・神奈川総合高校(普通科と専門学科の併置)※2020年度(令和2年度)

「求める生徒像」を各校のスクール・ポリシーで確認!
特色ある取り組みも学校選びの材料に

前述の通り、公立高校も教育環境の変化に対応すべく「県立高校改革」により新たな取り組みを行っています。

加えて、2020年7月より国の就学支援金が引き上げられることとなって以降、国と県独自の「助成制度」によって、私立高校に進学する金銭的なハードルも以前と比べ、格段に下がっています。

実際に、2020年度(令和2年度)と2021年度(令和3年度)の神奈川県の中学卒業生の進学先を比較すると、神奈川県内の公立高校進学者数 422名の増加に対し、私立高校は878名の急増となっています。

※神奈川県「令和3年度 公立中学校等卒業者の進路の状況」集計結果(第3・4表)より

私立高校は過去5年に遡っても14,435〜14,519名で推移しており、助成制度が実施されることとなった2021年7月以降に入試した2022年 私立高校 進学者数の急増が伺えます。

「高校であれば、どこでもいい」という受験は次第に変わっていくかもしれません。

気になる公立高校のスクール・ポリシーも見てみよう!

神奈川県立の高校では、学校の社会的役割・存在価値を発揮するため、育成を目指す資質・能力を明確にするための考え方を示した「スクール・ミッション」を2022年度より公開しています。

各校が策定するスクール・ミッションに基づき、

どのような資質・能力を、
どのようなカリキュラムで育成するのか、

といった教育活動の方針を示したものが「スクール・ポリシー」です。

神奈川県立の高校の「スクール・ポリシー」は、大学で導入されている「3つのポリシー」をモデルとして策定された次の3つです。

1 、グラデュエーション・ポリシー(育成を目指す資質・能力に関する方針)
2 、カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)
3 、アドミッション・ポリシー(入学者の受入れに関する方針)

各高校の課程ごとに策定されているため、
“ 自分が志望する高校が、どのような生徒を求めているか ” がわかります。

神奈川県立高校の「スクール・ポリシー」はこ

※横浜市教育委員会は、横浜市立の高校のスクールミッションを令和3年度中、スクールポリシーを令和4年度中に策定する方針を発表しています。


新学習指導要領が全面実施されたことで、高校教育も日々アップデートされています。

情報収集は、“ 高校受験をするため ” ではなく、
高校でどのようなことに取り組みたいか、を積極的に考えて行うことで、将来の選択肢を広げる大きなメリットになります。
公立志望であっても、各校の特色ある取り組みにしっかりと目を向けられるよう、早い段階からの情報収集をしていきましょう。