湘ゼミコラム

高校受験・入試

〔中学受験〕〔高校受験〕倍率が低いと合格しやすいのか

2019.01.22

入試まで残り時間が少なくなってきたこの時期、お伝えしていた「入試直前期の学習法」をお休みして、今回はこちらもとても大切な「倍率」を話題にしてお送りします。

倍率が低いと合格しやすい」のは本当なのか?

倍率が低いということは、受験者に対して合格者の割合が高いということです。

倍率が高いときに比べると、合格はしやすくなりそうです。

宝くじのように考えると、「売り出されるくじ(出願者)の数」に対して「当たり(合格者)の数」が多いので当選の確率がぐっと高まる感覚ですね。

倍率2倍」は2回に1回合格する?

「2回受験したら1回は合格する」

「2回に1回はチャンスがある」

というとらえ方があります。

しかし、受験に関していうと、この「宝くじ的なとらえ方」は誤りといえます。

宝くじと受験の大きな違いは、「宝くじ」のチャンスは購入数によって増えるのに対して、「受験」のチャンスは学力に関わって増減するということです。

宝くじは購入枚数が同じであれば、当選確率も同じになるという「購入者全員がフラットな関係」にあるといえるでしょう。

受験は、受験生それぞれの学力が既に異なっています。「模試の得点がそれぞれ違う」ということにも表れていますね。つまり、倍率がフラットな条件で適用されないといえるでしょう。

「受験」と「人気ラーメン店」の類似点

受験の倍率は「人気ラーメン店の行列」と似ています。

合格者数は「ラーメンが提供できる人数」、受験者数は「店にできた行列」にたとえてみます。

どんなに行列が長くても(受験者数が多い状態⇒高倍率)、何番目に並んでいるのか(持っている学力≒模試の得点)によって、ラーメン(合格)にありつけるかどうかが変わってきます。

もちろん、ラーメン店の行列と実際の受験の大きな違いは、「入試の得点」によって「行列の順位をごぼう抜きできる」点にあります。入試本番で大失敗すると行列の順番は一気に下がります。とはいえ、「模試の得点」が無関係なくらい本番の点数が変動することはそれほど多くありません。特に高校受験や大学受験のように「大人」が受験する場合、模試の得点からの変動はかなり少なくなります。

このように考えると、行列の後ろのほうに並んでいるのであれば倍率1.1倍であっても不合格の可能性が高まりますし、倍率3倍の列に何回並んでも大逆転合格の可能性は低そうです。

反対に行列の先頭近くに並んでいるのであれば、たとえ倍率100倍であっても合格の可能性は高いといえるでしょう。

受験に話を戻しますと、やはり合否を最も大きく左右する要因は「持っている学力の高さ」であるといえるでしょう。倍率を考慮する意義はありますが、冷静に判断し、必要以上に影響されないことが大切です。難しい受験になりそうなときこそ、倍率に頼るのではなく、残った時間で「あと少しの学力」を高めるところに力を注ぐことが、一番の近道になるでしょう。最後の最後まで学力は伸ばせます。あきらめないで効果的な取り組みを続けましょう。

倍率」に見る数字のマジック

受験の「倍率」には「志願者倍率」と「実質倍率」があります。

国私立高校入試」「公立高校入試」「国私立中学入試」「公立中高一貫校入試」において、まず最初に発表されるのは「志願者倍率」です。

しかし、「国私立高校入試」「国私立中学入試」「公立中高一貫校入試」では、あらかじめ「定員よりも多めの合格者」を出す、もしくは「繰り上げ合格」を出すといったことで、募集定員よりも合格者が多くなります。つまり志願者倍率よりも実質倍率が低くなるのです。

また、「公立高校入試」でも、最初の倍率が発表された後に「志願変更」がありますし、上位校では志願変更後にも「受験辞退」「当日欠席」などで受験者が減り、実質倍率が下がることが多くあります

発表された「志願者倍率」だけで受験するかどうかを決めるのではなく、正しい視点から判断することが大切なのです。塾にお通いの方は、担当の先生のアドバイスをもらうことをお勧めします。

倍率以外の判断基準も

倍率が高い低いで一喜一憂するのではなく、今までの学習の経緯(模試の得点・偏差値など)も含めて最終的な受験校を決定しましょう。

高い倍率に過度な不安を感じて他の学校に志願変更をすることは、「行列の先頭付近に並んでいるのに、列を外れて他の店の行列に並ぶこと」にもなりかねません。

そうなったとき、一番喜ぶのは「ボーダー付近」に並んでいる人になります。入試の得点しだいで合格の枠が1人分空き、確率がぐっと上がることになるからです。

反対に、偏差値が同じ程度の学校であれば、同じような学習の経緯を経ている受験生が多くいるので、倍率が低くなると合格率は高まるといえます。こんな魅力的な利点ばかり目を奪われがちですが、前述のとおり志願時においては「実質倍率」が見えないことが多いので、(みんなが一斉に志願変更をして)変更があだになってしまうリスクが残っていることは知っておく必要があります。