湘ゼミコラム

高校受験・入試

神奈川・東京・千葉・埼玉の進学実績比較による特徴解説

2018.09.06

湘南ゼミナールは一都三県に校舎があり、それぞれの県における特徴があります。今回は進学実績比較による特徴解説を紹介させていただきます。

大学進学を見据えた高校選択

こんにちは!今年は台風が多いですね。登下校、通塾途中での強い風や雨には充分お気をつけください。

さて、前回は進路選択における様々な視点をお伝えいたしました。引き続き、今回は大学進学実績について、都県によってどの程度違いがあるのかを、比較的近いランクのトップ校・準トップ校を例に挙げてみたいと思います。

高校受験は県大会、大学受験は全国大会

高校受験は県内都内の受験者との戦いですが、大学受験は全国の受験者との戦いです。

同じ都県内の近いレベルの学校だけで比較すると、どうしても3校~7校程度の狭い範囲の中での比較になります。その範囲をぐっと拡げて、湘南ゼミナールの校舎がある神奈川・東京・埼玉・千葉の4都県で比較してみましょう。すると、県内都内では中途半端だと思われていた学校が4都県内では上位に食い込んだり、またその逆だったりします。

次の表は、湘南ゼミナールが学校説明会資料や学校HPより収集した今春の大学進学実績です。

国公立大学

大学進学実績には色々な区分分けがあります。

その区分分けは、上位国公立の定番である「旧帝大7校の合格者数」、さらに上位の難関国公立に絞った「東京大学、京都大学、一橋大学、東京工業大学と一部医学部の合計合格者数」、それらに筑波大・千葉大・埼玉大・横浜国大・横浜市大・東京都市大を加えた「首都圏主要国公立大学の合格者数」など様々です。

表1はシンプルに全ての国公立大学の合計合格者数を現役合格の多い順に並べたものです。

1位は横浜翠嵐となっています。では横浜翠嵐が一番すごいのかと言うと、そう単純な話ではありません。

難易度最上位である筑波大学附属駒場、東京学芸大学附属、日比谷が横浜翠嵐を下回っている理由は、同じ国公立でも東大、京大、一橋、東工大などの上位難関校しか受験しない傾向にあることや、卒業生数が少ない(筑駒は1学年160人程度)からです。

また、「合計」欄は浪人生を含めた合格者数と順位になります。合計で浦和高校が1位になる理由は、上位国公立に合格できない場合は浪人を選択する傾向が非常に強い学校だからです。西、国立も同様の傾向にあるといえます。ある程度近いランクの学校を比較すると、翠嵐・厚木・戸山・八王子東は現役志向型、湘南・船橋・大宮・千葉はバランス型になります。

ここまで難関高校の話ばかりになってしまっていますが、決して難関校に限ったことをお伝えしたいのではありません。進路選択の際に大事なポイントが象徴されているのです。ここまでのポイントまとめます。

ポイント① 学校によって、大学受験でOKとするレベルの下限が変わる。

ポイント② 近いランクの学校でも現役志向、浪人志向、バランス志向とタイプが異なる。

ポイント③ 卒業生数が異なるので、実数が多い=学力を伸ばしてくれる学校 とは限らない。

私立大学

国公立と同様、私立大学も様々な実績の区分分けがあります。

最上位私大である「早慶合格者数」をはじめ、東京理科大と上智大学を加えた「早慶上理の合格者数」、一般的な上位私大6校である学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政をまとめた「GMARCH合格者数」、同じく一般的な中堅4大学である日大、東洋、駒沢、専修をまとめた「日東駒専合格者数」などがあります。

表2はGMARCHの現役合格者数が多い順に並べた表です。

先ほどの国公立の表と比べ、上位にランクインする学校が大きく異なります。

横浜翠嵐、日比谷、船橋、浦和などの学校がランキング上位にならない理由は、国公立で挙げたポイントの通り、より上位の学校をOKラインとしているため、GMARCHレベルはそもそも受験する生徒が比較的少ないからです。

1位の川和高校をはじめ、上位10校に神奈川の高校が6校も入ります。うち、国公立のランキングでは30位前後だった学校が4校(川和、横浜緑ヶ丘、柏陽、希望が丘)も入りました。埼玉の浦和一女、千葉の小金も同様で、上位20校まで目を移すと、千葉は薬園台や佐倉も同タイプの学校と言えます。これらの学校は国公立よりも私大を受験する傾向が強い学校ということになります。

特に、神奈川県や千葉のトップ校は横浜翠嵐、湘南、横浜サイエンスフロンティア、船橋など一部の学校を除き、私大受験の傾向が高いといえ、中でも「現役」・「浪人を含めた合計」ともに順位が高い川和と横浜緑ヶ丘は、首都圏内の近いランクの中でも極端に私大受験の傾向が高くなっています。

一方、表1をあらためて確認すると、国公立ランクの上位20校に東京都立の高校が9校入り、次いで神奈川の5校となっています。これら2都県は学校の数が多いことも要因ですが、表2の順位を参照すると、国公立重視の学校が多くある都県といってよいでしょう。

繰り返しますが、あくまで例としてトップ校を取り挙げています。高校の進学実績を読み解く「視点」をお伝えしておりますので、そのまま、ご自身の志望校に合わせ、同じ視点で実績をチェックしていただきたいと思います。

ここまでのポイントをまとめます。

ポイント④ 私学のランキングでも学校によって、大学受験でOKとするレベルの下限が変わる。

ポイント⑤ 学校によって、国公立重視と私大重視で極端に分かれる。

ポイント⑥ トップ校では東京=国公立重視、神奈川・千葉=私大重視の学校が多い傾向。

ポイント⑦ 川和と横浜緑ヶ丘は首都圏の近いランクの高校で私大重視傾向がもっとも高い。

傾向が分かれる要因は?

いかがでしょうか。これらの学校はトップ校ですので、学校説明会に行くとどこも「うちは部活加入率が90%を超え、文武両道です。」と説明を受けることが多いですが、実際には部活動の実績が学校で異なるのと同様に、進学の面でも様々な違いがあるということです。

では、進学面での国公立傾向と私立傾向の違いはなぜ生じるのでしょうか。

重要なことは、学力が原因ではないということです。厳密には各校の生徒には少しの差はありますし、筑波大附属駒場と比べてしまうと一般のトップ校とは大きな差があるのは事実です。

しかし、それら国立の高校や日比谷など一部の最上位公立校を除くと、合格・入学に必要な学力にそれほど大きな差はありません。

例えば私大傾向の高い川和・横浜緑ヶ丘の合格に必要な偏差値を、横浜翠嵐や船橋、浦和と比べると偏差値は4~5程度とやや差があります。しかし国公立現役ランク8位の八王子東や15位の青山と比べると2~3程度の違いです。同4位の厚木、同11位の横浜サイエンスフロンティアとの比較に至っては偏差値に差はありません。

最大の要因は「OKライン」とそれを生み出す「環境・仕組み」です。

東京都では、10年以上前に都立高校改革があり、国公立大学合格を明確な指標として掲げました。それ以来学校側が生徒たちの意識レベルを上げるように働きかけつつ、カリキュラムも高3でも文理に分けない学校もあるなど、国公立に特化した工夫を重ねてきました。

その文化が浸透した結果、良し悪しはさておき、今では慶應や東工大に現役合格しても「浪人して東大を目指したい」という生徒が出るほど意識レベルが高まりました。

それでは、一方の私学傾向の高い県や学校は、私学を目指すような指導をしているかというと、決してそうではありません。実際にそういった学校の先生方にお話を伺うと、「国公立を受けてみようよと、声をかけるんだけど」「模試の判定がB以上でないと受けない生徒が多くて」「現役で行かれるところにいければという子が多くて」「慶應の推薦とれると言われると東大目指そうよとは言えなくて」などなど、国公立を目指して欲しいけれども、受験校や進学先が『生徒自身のOKライン』に強く依拠しているというコメントが多いのです。そこには、先輩が、周囲がこのくらいのレベルの大学を受験しているから、自分もこのくらいだろう、という認知があるのではないでしょうか。

広い視野で受験校を選ぶ

決して私立より国公立が良いということではありません。受験生本人のやりたいことが、ある私学のある学部学科にしかないこともありますし、進路選択は本人の意思で決定する方が、その後の意欲や満足度も高いでしょう。

ただし、自分の力を過小評価してしまっていたり、周りの皆がこのくらいだから自分もだいたいこのくらいだろうと、思い込みでOKラインを決めてしまったりするのは、進路選択の幅を大きく狭めることになってしまいます。その考え方が、高校入試だけではなく、何校受けてもよいはずの大学受験時代へも引き継がれる傾向があるということです。

湘南ゼミナールは、まずは高い目標を目指してチャレンジを促す進路指導を行います。正直、大変時間がかかるのですが、そこには様々な視点、広い視野から進路を考えてもらいたいという強い思いがあります。合格可能性を伝えるだけの指導と比べると、受験をするご本人と向き合う必要もあり、受験校を決定するのにも時間がかかることもあります。しかし、色々な視点から将来を考えて志望校を決めた経験は、学生時代を終えた後も生徒さんご自身を支える大きな力になります。もちろん最後に受験する学校は生徒さん自身とご家庭で決めていただくのですが、どこの高校に行くことになろうとも、チャレンジングスピリッツと広い視野を身につけて進学してもらいたいと思います。

まだまだ暑い日が続きます。定期試験後に夏の疲れが一気に出てくる子が多くなります。

受験は長距離走です。バランスをとりながら走り続けていきましょう!